? 業界にとって不利な要因
?-1 国内船主の中古船輸入志向を主因とする国内建造需要の低迷
当期の新造需要は低水準にとどまった。国内の新造船活動はバージ、タグ、漁船、その他の単純な船種に限られた。労賃が比較的低いにもかかわらず、国内建造船は輸入中古船より価格が高い。このような場合には船主の選択は中古船の輸入に傾く。それは中古船を輸入する方がリスクが小さく、必要とされる投資額も少なく、したがって国内建造による船腹整備より魅力的なためである。同時に、船主はMARINAの要件をすべて充足すれば、すぐに事業活動を開始することができる。しかも、国際市場における国内造船事業者の競争力には、特に新造船のコストと品質の面で、改善が見られない。一方、船舶構成部品や交換部品には高率の関税、その他の税金が課せられ、フィリピンの造船産業が世界市場で競合することを不可能にしている。
?-2 造船部門の需要充足を支援する関連工業の未発達
造船所は、少なくとも自社使用の資機材の供給だけでも、交換部品のメーカーに依存せざるを得ない。発達した関連工業の不在がSBSR部門の成長を妨げている。フィリピンに十分発達した関連工業があれば、SBSR部門が必要とする構成部品はすべて国内で生産され、輸入の必要がなくなる。国内生産を振興すれば、品質と価格の面で造船企業の要請に応えられるような資材や交換部品の国内調達が確保され、この直接費の面で造船所に好影響を及ぼす。しかし造船用資機材の国内生産振興で利益を得るのは造船産業だけではない。それは国内鉄鋼業の生産拡大にもつながり、鉄鋼輸入の減少という好影響をもたらす。
?-3 高い労働移動率が適格な技能の不足を一層深刻化
造船労働者が国内では得られないような高給を提供する外国労働市場の魅力に引かれて労働移動率が上昇するため、多数の国内造船所では適格な技能の不足が一層深刻化している。しかも高給を払えない造船所の一部は、自社従業員の訓練に無関心な造船所でもある。これらの造船所では訓練用の機器や設備、指導者が不足し、また訓練を充実させるインセンティブもない。造船所の生産性向上を妨げるその他の要因としては、劣悪、あるいは不健康な労働慣行と条件、不潔な環境などがある。また経済活動に季節的変動があるため、雇用の永続性もない。契約が一旦満了すれば、労働者は一時的に解雇される。