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マレーシアの主要造船所はこれらの予測を意識して、需要の伸びに後れを取らないように、大型船向けに設備拡大の措置を講じている。品質面と納期が改善されれば、日本の造船所のように船価面でも有利に立てる。したがって世界的に見て将来の展望は明るい。

1. タンカー

石油の海上荷動きの微増と老朽船舶の段階的市場撤退に伴い、国内船主が国内石油会社向けに数隻のタンカーを発注した。マラッカにペトロナスの精油所が完成すれば、そのターミナル向けにタンカーとタグの追加需要が見込まれる。また若干のLPG船の代替需要も期待されている。

しかし、船価と運航収入との落差がまだ著しい。運賃の低迷により、高い船価と低い運航収入とのギャップが広がっている。そのため船主は造船所に新造価格の引下げを迫っている。

2. 老朽船

現在、マレーシア船隊には船齢25年以上の船舶が約200隻ある。マレーシア水域内にこれだけの老朽船が残存していることは、新造船に関して重要な要因である。

今日の新造船は高速で、港湾での荷役も大幅に高速化し、コンテナ化、その他貨物のパッケージ化が進んでいて、貨物の揚げ降ろしが迅速化しているので、船主としては代替計画を慎重に再検討しなければならない。

3. 近海航路

この部門では、特にコンテナ・フィーダー・サービスで需要が見込まれている。マレーシアの造船所としては、標準設計を開発して、これを国内や他のASEAN諸国の船主に向けてプロモートしなければならない。

4. オフショア部門

石油・ガス産業の急速な拡大に伴い、国内の既存船腹では需要の伸びに対応し切れなくなった。そのため、この部門では外国船舶の就航が急増している。政府の内航海運政策により、自国籍のマレーシア船はこの部門を完全に押さえているが、用船期間が短いため、国内船主にとって自社船を投入するには魅力が欠けている。

5. 漁業

遠洋漁業の発展により、この部門はマレーシアでは急成長を示している。マレーシア造船業は、この市場を開拓するために、各種の方策を講じなければならない。

6. 海上保安・防衛

政府は海上巡視艇(OPV)の建造を計画している。これは既存の巡視艇が船齢25ないし30年、あるいはそれ以上に達し、またマレーシア経済専管水域内の哨戒という新たな任務が加わったため、マレーシア王国海軍が検討中の代替計画によるものである。

 

 

 

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