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ためです。この支援を受けるためには、企業は事業計画、労働者との協議などの面で改善の実績を証明しなければなりません。

オーストラリア造船業は、環境の変化、特に複数船主の共同発注等の場合の金融面での新しい制度などに対処しなければなりません。

輸出市場での引き合いの状況は、特に高速フェリーや動力豪華ヨット等の分野で一般に「活発」から「非常に活発」というところで、一方、鋼船についても巡視艇、タグ、オフショア・サポート船等にある程度の関心が見られます。

現在、20,000grt以下の特殊船の建造では、オーストラリア造船業の競争力は1980年代より一層高まったと見られる節があります。わが国の造船所は特定の海外受注競争では共同で対応したりしていますが、これは業界の成熟ぶりを示すものです。

業界には景気の変動があるため、造船技能の中核部分だけを維持して、繁忙期には他の産業部門に支援を求めるという傾向が見られます。これによる雇用の不安定により、経験による学習の面で問題が生じます。それでも質の高い小型船の建造部門では、生産技能は一般に満足すべき水準にあります。これは特に、研修に力を入れ、技術専門学校や職業訓練機関と密接な関係を保っている企業について言えることです。

各社とも研修にはますます力を入れ、報奨制度の再構成を図ったりしていますが、特定の、しかし多種類の技能が不可欠である造船業においては、その効果は今後とも一層高まるに違いありません。特に職種区分の撤廃、多種技能や広域技能の奨励が目立ち、民間造船所ではそれが効果を上げています。

プロジェクト管理技術は、納期を守り、しかも高いコスト・パフォーマンスを確保するために不可欠の要素です。特に資源産業におけるさまざまな展開は、プロジェクト管理者の養成や効率的なプロジェクト管理制度の開発を促進するものでした。新型潜水艦やフリゲート艦の建造など、主要な防衛調達計画は高度なプロジェクト管理制度を要求します。民間部門では、新造船、修繕船とも、一般にプロジェクト管理は有効に機能してきました。

法令面では、オーストラリア造船業に影響のある要素が二つ挙げられます。第1に、国内の造船事業者は、国内で建造、運航される船舶の設計、運航、基準に関する規則に配慮しなければなりません。運輸省が定めるオーストラリアの基準は、他の大抵の国の基準よりきびしく、特に便宜置籍国より遥かにきびしいものです。業界では、このきびしい基準は適切なものであり、オーストラリア建造船の質に対する信頼を高めているものと考えています。

法令面でさらに大きな影響を及ぼしているのは、産業全般に適用されるもう一つの要素で、労働集約的性格の強い造船業にとって特に重大なものです。例えば、オーストラリア造船業の直接人件費は、わが国より北に位置する競合造船国より、はなはだしい場合には20倍も高い水準にあります。もっとも、公平を期するために付言すれば、現在のところ低賃金国はどこも、アルミ船の建造でわが国と競合していません。

 

 

 

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