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するという方向にあります。オーストラリア造船業は、アルミ製タグを何隻か建造していますが、いずれも良好な運航性能を発揮しています。

90年代の海軍の新造需要は当面活発で、艦艇建造ヤードはコリンズ級潜水艦6隻、水路測量艦2隻、GRP掃海艇6隻、ANZAC級フリゲート艦9隻等を受注しています。下請受注も若干ありますが、オーストラリアのその他の老舗造船所ではあまり下請けを受ける見込みはありません。艦艇の修繕は、国防省と固有のAustralian Defence Industries(ADI)との5年間工事量保証契約で、主要な工事はすべてADIに集中しています。まもなく一連の外洋巡視艇の発注が行われる見込みです。

小型(300トン以下)の鋼船の分野でオーストラリアの造船所が競合できるのはハイテク、高品質の設計による船艇のみで、一部の造船所はこの面である程度、成果を上げています。この種の船艇に対しては世界的に大きな需要がありますが、オーストラリア造船業の人件費が高いため、アジアの低船価と対照的に、わが国は質で定評を得ていることから、今後の受注はあまり期待できません。

船主がとかく低船価国から、質の低い、在来型の設計の船を買おうとする傾向があるため、オーストラリア造船業は困難に直面しています。浚渫船等の特殊船の需要は、特にオーストラリアでは頻繁にあるわけでなく、国内造船所が経営上、それに大きく頼ることはできません。それでもオーストラリア造船業は、この種の船舶を順調に建造しています。

修繕船市場では、アジア、特にシンガポールのヤードが大幅なコスト増に対処していることから、発展が見られます。特筆すべき動きとして、シンガポールのKeppel Groupがオーストラリアの主要修繕船ヤードを買収しました。

オーストラリアは鉄鋼、アルミ、その他造船用資材の生産国でもありますが、高価なハイテク機器は大部分を輸入に依存しています。高性能の船舶では、機器が大きなコスト要因となります。

要するに、オーストラリア造船業は現在、大型鋼船分野では停滞していますが、特殊なアルミ船艇やフリゲート艦、潜水艦、掃海艇等の主要な艦艇ではかなりの活況を呈しています。

オーストラリア造船業は1947年以来、各種の補助金制度により政府の助成を受けてきました。1989年補助金(船舶対象)法により、補助金の対象となる船種、登録の要件、補助率(現在は5%)等を定め、オーストラリア造船業の国際競争力を強化するための改革が実施されました。補助の対象は、工事費のうちの特定の項目に限られています。他の諸国では、契約全体を対象として補助金が算定されるので、生の数値だけを比較すると誤解が生じる恐れがあります。

その他の政府の重点施策としては、金属材料を使用する工業部門の振興制度などがあり、これは個別企業の業績改善にかなりの効果がありました。それは政府の支援が、設計、エンジニアリング、経営管理制度、技能向上など、特定の分野での成績改善に目標を絞った

 

 

 

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