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さらに、造船業界が急速に発展していることから、協調的かつ建設的な国策と計画を打ち出してもらうため、かつ海事法規や通商協定に関する国際交渉でオーストラリアの国益を増進するために、政府との密接な関係が特に重要になってきます。

オーストラリアの新造船・修繕船産業は、国内・国際市場において競争力の優位をさらに強化するために、新たな地平を求め、新たな課題に取り組んでいます。直面する問題は数多あります。特に国際市場と外国政府に左右される問題に対処しなければなりません。

オーストラリア造船業は自らの対応の及ぶ問題には自ら対処し、大抵の企業は、世界各国で政府助成が行われている、非常に競争のきびしい環境でも[生き残って]いますが、「対等のルールの下での競争ではない」と感じています。

今日のオーストラリア造船業の強みとしては、洗練された設計、製品の高品質、政治の安定と穏健性、生産面における革新的なアプローチなどが挙げられます。労働者も協調的で、前向きの姿勢を示しています。

オーストラリア造船業の運命は、高い意欲を持ちながらも規模は小さい民間企業が握っているものの、長期的には明るい見通しが持てます。

業界が直面する課題の中でも最も重大なものは、造船所の運営、販売契約の実行の両面での必要資金の調達です。オーストラリアにおける支援金融の問題はきわめて切実になっています。船主が容易に利用できる融資パッケージ(少なくとも諸外国の条件に匹敵するようなパッケージ)が提供されれば、業界は大きく浮揚することができます。船舶の買手に対する支援としてEFICの融資は国際的に見て競争力のある条件で供与されますが、現在のところ、これだけが主要な信用供与です。他の資金源も徐々に開発が進んでいます。

オーストラリア造船業は、主要企業に依存する無数の小企業も含め、多数の熟練者を雇用しており、これら従業員の大半はきわめて意欲が高く、また各企業とも強い輸出志向をもって事業を進めています。

オーストラリアの設計と全般的な技術知識、特に軽量の営業フェリー、漁船、動力ヨット等に適用される軽量ハイテク建造技術は、世界最高水準と認められています。それはこの分野で輸出が特に実績を上げている一つの理由でもあります。軽量艇部門の生産額は全造船業の産出額の半分以上を占め、その大半が輸出に向けられていることは特筆すべきであります。

オーストラリアにおける高速フェリーの建造は近年めざましい発展を示し、わが国の設計、工作の水準は、この分野でもう一つの先進地域である北欧に優るとも劣らないとされています。この成功は、革新的、かつ技術的にも進んだ製品を創り出している国内の設計技術者によい刺激となっています。オーストラリア製の高速フェリーが日本企業にも続々と輸出されていることは喜ばしい限りであります。

オーストラリアの大抵の造船所にとって、輸出市場における競争上の優位は、生産効率と製品の品質が優れていることによるものです。大半の造船所はすでに品質保証・品質管

 

 

 

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