ま え が き
急激な為替変動(円高)とそれに続く経済の構造変化はわが国の産業経済全般、中でも中小企業、下請企業の経営に大きな打撃を与えた。
造船業においても大幅な建造コストの削減、資材調達の見直しが行なわれた結果、当業界は受注価格の大幅ダウンを余儀なくされ、その後の円安と安定的な為替の推移にもかかわらず回復の展望は開けていない。
また、構造調整に伴う規制緩和が進む中で、国際競争・企業間競争の激化などにより元請企業の事業の再編・合理化が進み、元請を頂点として維持されていたタテ系列の相互依存的企業関係が大きく変化しつつあるなど当業界の経営環境はますます厳しさを増しているのが実状である。
一方、元請各社は次世代船舶の研究開発やメガフロートなど新規事業分野開拓と並行して、CIM、CALSなど情報を高度に活用した生産システムの構築を進めている。
現場の第一線を担う技能集団としての協力企業の存在は、わが国の造船業が存在し続けるかぎり不可欠であることに変わりはないが、将来の高度に情報化された生産システムの下での協力企業の果たす役割、取引形態等々には自ずと大きな変化が予想される。
当業界としては、このような元請業界の動向、社会的なニーズや経営環境の変化を呪み、業界の中・長期的な基盤強化策を探るべく平成6〜8年度に「基盤整備調査研究事業」(日本財団補助事業)を実施し調査・検討を行ってきたところである。
その結果、深刻な高齢化、労働力不足を抱える当業界の実態や造船業の高度情報化への取り組みなどを踏まえ、労働力にかかわる情報などを含め経営者の意思決定をサポートしうる情報提供事業について調査検討を行い、業界ベースでの情報の戦略活用へ向けての環境整備に取り組み、業界の基盤強化を図ることとした。本報告書は当業界の将来あるべき情報活用への取り組みについて調査検討を行いその活用のしくみについてのアウトラインを基本構想案として示したものである。