第3章 トラブル予防
1.定期整備と船舶安全法
1)定期整備の重要性
整備とは、機関の各部を点検して不具合の発見と所用の補修、部品交換等を行い、機関の運転に係わるトラブルを防止するとともに、機関の性能を回復し、良好な状態を維持していくことであり、船舶の安全確保と船舶保守管理の合理化に寄与するものである。
一般に、整備とは機関を停止して分解・解放・補修を行うことと考えがちであるが、常に機関の性能を維持していくためには、定期的な分解整備は勿論のこと、それだけではなく燃料、潤滑油、冷却水等の管理、フィルタ類の清掃、過給機の洗浄等、日頃から計画的な点検を行い、不良箇所の早期発見に努めることが極めて重要である。
統計的に見て、舶用ディーゼル機関で最も事故発生率の高いのは小型漁船であり、その内主機関の事故が最も多く、小型漁船(20トン未満)の海難事故の約35%を占めている。機関事故発生の原因は多種多様であるが要約すれば取扱と整備不良に起因するものが殆どであり、正しい取扱と定期点検整備を行うことにより、これらの事故を未然に防止することが十分可能である。
定期整備のインターバルは、機関の型式毎に、使用環境条件や取扱方法などにより異なるが、メーカの整備要領を基準に、船毎に使用環境条件や取扱方などを考慮して定め、適宜修正を加えていくとよい。残念ながら現状は、定期整備と言うと、JG船における強制検査(定期検査、中間検査、臨時検査)を除くと、中大型漁船の操業前の点検整備及び保証ドック時の点検整備程度で、小形漁船は故障時の修理が主体で定期整備はごく少ない状況にある。今後事故防止の観点からこれらの定期整備を増やしていくことが肝要である。
2)船舶安全法における検査
整備に関係する検査としては次の3種類の検査がある。
(1)定期検査
船舶の構造、整備などの全般にわたり根本的に行う精密な検査であって、船舶