3.1.1 ハードウエア
(1) ハードウエアの多様化と高度化
家庭用ゲームの急成長に着目して、松下電器やソニーといった、従来のゲーム産業とはまったく違った異業種からの参入も最近では見られるようになった。ハードウェアであるゲーム機も高度化の一途をたどっている。8ビット機の「ファミコン」から、16ビット機の「スーパーファミコン」、そして32ビット機ではセガの「セガサターン」、SCEの「プレイステーション」などが登場した。さらに96年には、64ビット機の「NINTENDO64」が発売された。このような参入企業の増加とハードの高度化に伴い、16ビット機までは、任天堂の独占状態であったゲーム機市場が、32ビット機あるいは64ビット機の時代に入り、任天堂、セガ、SCEの三つ巴の競争に変わった。
?@ 任天堂独占時代(「ファミコン」(8ビット機)〜「スーパーファミコン」(16ビット機))
任天堂は83年に「ファミコン」(8ビット機)、90年に「スーパーファミコン」(16ビット機)を発売しいずれも大ヒットした。8ビット機、16ビット機とほぼ任天堂の独占状態であった。94年3月末時点の8ビット機と16ビット機の国内累積出荷台数は5,000万台強で、このうち任天堂が約8割を占めていたのである。ソフトの売上でも任天堂対応ソフトが全体の約9割を占めるような状況であった。
任天堂が圧倒的な競争力を持ち得た要因として、第一にハードの価格を可能な限り低く押さえたこと、第二にソフトメーカーとライセンス契約をするなど、ソフトメーカーの開発力をフルに活用して魅力あるソフトを「ファミコン」市場に投入するしくみを作り上げたこと、第三に流通において独自のシステムを作り強い力を持っていたことなどがあげられる。
?A 市場伸び悩み時期
急成長してきたゲームビジネスであるが、1992年から98年は市場が伸び悩む。ここで重要なのは「ファミコン」から16ビット機の「スーパーファミコン」の時代になっても市場があまり大きくなっていないと推測されることである。つまりピーク時の状況に比べると、テレビゲームの所有者の総数はさほど変わっていないと考えられる。
?B 32ビット機時代(セガ「セガサターン」、SCE「ブレイステーション」)
低迷していたゲーム市場であったが、94年にパソコンと同じレベルの、より高性能な32ビット機が相次いで投入されたことにより市場が活性化した。その中でも成功を収めたのがセガの「セガサターン」、SCEの「ブレイステーション」であった。どちらもCD-ROM搭載の32ビット機である。セガサターンは97年6月の時点で出荷台数500万台、プレイステーションは97年6月の時点で出荷台数750万台となっている。
この2社が成功した理由は、第一にソフトがスーパーファミコンのソフトよりも格段に安かったこと、第二にセガに関しては業務用で大ヒットしたゲームを移植したり、スーパーファミコンで大ヒットした「ファイナルファンタジー」シリーズを供給しているスクウェアがSCEでシリーズを出すなど人気ソフトを供給できたこと、第三にハードの価格を徐々にさげることによりユーザー層の拡大に成功したこと、第四にコンビニ流通や独自の流通体制を築き上げたことなどがあげられる。ここでの大きな変化はハードメーカー主導からソフトメーカー主導へ変わったことであろう。