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6章 マルチメディア型観光情報の収集・提供の仕組み作りの研究

1 マルチメディア型観光情報の収集・提供システムの開発にあたっての要件

(1) 既存メディアとの役割分担の確認

現在の観光情報提供の主力はパンフレットとガイドブックであり、マルチメディア型観光情報との対比でいえば、「情報としてコンパクトにまとまっている」、「特別な機器を必要としない」、「安価でどこででも手に入る」といったメディア特性が利用者に支持されている。

これに対してマルチメディア型観光情報は有利な特徴を持つ反面「パソコン等の機器の操作を必要とする」、「情報を探し出すのに手間がかかる」といったマイナス面がある。また現状では対象となるユーザー層に偏りが見られる。

マルチメディア型観光情報の収集・提供システムの開発にあたっては、これらを踏まえた上で、既存メディアとの関係ないしは役割の分担のあり方を検討する必要がある。今回のアンケート結果にも現れているように、

?紙媒体ではカバーし切れない変化の早い動態情報

?紙媒体ではカバーし切れない大量の情報

等がマルチメディア型観光情報の特性を活かした情報としてふさわしいと考えられる。現状では「動態情報」、「大量の情報」とも提供が不十分な状況である。

(2)マーケティングの重要性

情報提供に際して、「送り手」の発想から脱却して、「受け手」の発想に基づいた情報提供をすることが望ましいと考えられる。

現状では提供されている情報は「自然・人文・一般観光資源」の「静態情報」が最も多く、インターネット上で最も求められている情報は「宿泊」、「交通」の「動態情報」である等、提供ニーズと消費者ニーズが必ずしも一致していない。

「自然・人文・一般観光資源」は固定的なものであり、ガイドブックやパンフレットでカバーすることが可能になる。

インターネットに代表されるマルチメディア型観光情報においては、

?基本的に動態情報

?宿泊(空室状況等)、交通(道路混雑状況、駐車場状況等)、天気等の情報を中心にした提供を念頭に置いて、情報の収集・提供を図る必要がある。

(3)基本的な情報流通のデザインと維持

動態情報を収集・提供するにあたっては、そのための動的な仕組みが必要となると考えられる。事例からも明らかなように、そのためにはかなり強力なボランティア組織ないしはコーディネーター機能の存在が求められる。

しかしこれらが容易に実現できるとは考えにくく、必然的にその他の方法も含めてより容易に動態情報の収集・提供の可能な仕組み作りが求められる。具体的な「仕組み」としては情報収集書式やマニュアルの作成(いずれも後述)があげられるが、これのみで基本的な動態情報の流通が可能になるとは言えない。そこには、持続のための意思ないしはそれを支えるニーズが生まれる必要があろう。

持続のためのニーズの最大のものが、「集客に具体的に役立つ」という情報提供側の認識であることは間違いない。つまり動態情報の提供が直接的に集客に結

 

 

 

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