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は広い庭があるので、日当たりなどは良好とのことであった。材は全て自分の山から切り出した木材で造られたということで、立派な材をふんだんに使った建築である。大黒柱は樹齢200年のものをつかったので、この住宅は200年もつと教えて頂いた。新築前の江戸時代の建物についてお伺いしたら、柱などもしっかりとしており、「おかって」には石が敷いてあったので、今その石は裏の庭に使っているとのことであった。

次に伺ったのは、大正7年建築の格子のある住宅である。先程の鮮やかなベンガラに変わり、こちらはしっくりとした光沢の深みのあるベンガラである。月日のながれがベンガラに深みを与えた美しい柱である。土間が通る間取りで、やはり基本的なヨツマである。街道に面した座敷が我が家で一番落ちつく場所で、格子越しに見える街道のざわざわした雰囲気と静かな座敷の空気が初めて訪れた私にも何か安心感のようなものを与えている。

3軒目は建て替えて20年程になるという住宅である。このお宅も年代を語る深い光沢のあるベンガラの柱が出迎えてくれる。中庭を囲んで離れ、蔵がある。その蔵の向こうは畑がずっと広がり、敷地としては400坪程度とかなり広い。建て替えにあたっては、古い蔵は動かさずに新築したので、中庭を囲む形となり、雪をおとすところが中庭しかないのでそれが不便だと言われた。しかし、座敷から中庭を通して蔵が見え、その蔵も漆喰を塗り直すなどの手入れもされているので、手入れの行き届いた住宅だなという印象をうける。裏の畑の方まで見せていただいたが、向こうに見える里山までひろがる。

最後のお宅は広い間口に格子がある、軒は深く、軒を支える腕木に鉄製の補強がある重厚な印象の住宅である。入口を入ると広い土間がある。ここのベンガラもどっしりとした光沢を放っている。建築は明治39年で戦後までは薬種所であったそうだ。土間にあった小さな電灯は当時のものだと教えてもらった。おクドを床張りにした他はほとんど改造されておらず、日当たりが少し悪い他は住み心地も良好と言われた。座敷からは手入れが行き届いたお庭が見え、その裏は100m程はあるとのことだ。奥行きの長さには驚く。これが柏原宿のまちなみのもつ懐の大きさなのかもしれないと感じた。

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