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造物群保存地区制度」(以下、伝建地区制度と略す)である。伝建地区制度は、「城下町、宿場町、港町、農漁村集落など伝統的建造物群およびこれと一体をなしてその価値を形成している環境を保存するため、市町村が都市計画区域内では都市計画によって、都市計画区域外では、条例により定める地区」(文化財保護法第83条の2)である。1998年2月現在、全国で44地区か指定されてきている。伝建地区は、市町村か地域住民との話し合いの上で市町村が地区決定する制度であり、地区決定にあたり地区住民の理解と合意が大変に重要である。また、重伝建地区に選定されると、修理・修景・復旧・管理事業などにおいて国庫補助か出ることとなり、その補助を活用して歴史的町並の保全・継承を進めることとなる。三重県においては、現在関町の関宿か伝建地区に指定されている。

 

「建築協定(建築基準法)」

市町村が条例を定める区域内において、建築物の利用を増進し、土地の環境を改善するために、建築基準法の一般的な制限のほかに関係権利者全員の合意のもとに締結される協定である。住宅地としての環境、商店街としての利便等を高度に維持増進することを目的として、建築物の敷地、位置、構造、用途、形態、意匠または建築設備に関して定める。建築協定は、伝建地区とは異なり、協定内容実現のための具体的な事業などを有してはいない制度である。歴史的町並を保全するために締結された事例は稀少であり、一般市街地・商業地における良好な生活環境づくりの手法として活用されることが多い。

 

「地区計画(都市計画法)」

地区計画制度のねらいは、「現行都市計画法および建築基準法では十分に対応されていない街区から住区にいたる地区のレベルにおいて、一定水準の環境を備えた市街地の形成を図るための計画規制、すなわち、宅地回りの公共施設の配置と建築物の形態等を一体的、総合的に扱う計画を作成し、この計画に基づいて建築又は開発行為に関して必要な誘導及び規制を行う」ことである。

地区計画も建築協定と同様、伝建地区などと異なり計画実現のための独自の事業制度を有していない。計画区域内に発生する個別の開発・建築行為を、地区計画にしたかって誘導・規制することによって計画の実現がえられることとなる。注1

 

 

 

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