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街道側は主屋や門、土蔵などを連ね、町並を建築物によって整えようとする。

農家に近い主屋の屋根構造

市場庄の町屋は、土屋梁間が三間半ないし4間半程度に限られ、梁間のほぼ中央位置に柱を立てて地棟を通し、面側桁からこの地棟に登梁を掛け渡す簡単な小屋組を持つ。ザシキとカッテ以外は全て天井を踏天井とし、その上を、二階居室と小屋裏収納に当てるが、二階居室は小規模であり、上屋の大部分の小屋裏は収納に当てられることになる。このような小屋組は、束柱を縦横の貫で繁ぐ、市場庄周辺の平入町屋の小屋組とは根本的な相異があり、市場庄の妻入町屋は、さす組の小屋組をもつ草葺の農家に近い。

伊勢の妻入町屋は同様の小屋組を持つが、伊勢の町屋はもともと草葺であり。宝暦の大火を契機として桟瓦葺に転換していった。市場庄の妻入町屋も伊勢の場合と同じく、草葺を先行形態とするものと考えられる。

改造修理の容易な主屋の平面、構造システム

改造はカッテのダイニングキッチン化、浴室などの設備近代化に伴うもの、二階の内装、居室増のための背面への離れの増築。主体構造の改変を伴う改造は少ない。構造的な改変は下屋部分にほぼ限られる。変化に絶える融通の利くシステム。

バランスの良い構造で、部材断面もあまり大きくなく、壁面仕上げも手の掛る塗籠はない。

また、隣家との間が広く明けられ、町屋相互は独立しているため、町屋相互が軒を接する場合に比べて、修理が容易である点も有利な点である。

建替時にも継承される妻入の形態、敷地利用形態

木造軸組在来工法による建替では妻入の形態や敷地利用形態は維持されている。一方、プレハブなどそれ以外の工法構造による場合は、建築形態、敷地利用形態ともに伝統的な町並との違和感が大きい。

町屋としての限界と可能性

市場庄の妻入町屋は、農業生産と街道交通への対応の二面性を持つものであり、狭隘なし吉弥高密な集合にはなじまない。裏地や広い敷地間口を前提とした主屋の構成であり、町屋としては容易に、一般化し得ない。

しかし、優れた居住性、下屋部分の変更によって設備的な変化に対応できる、増築、駐車の可能な敷地の余裕、敷地規模に

 

 

 

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