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減し、街道に対して表を開放した農間稼ぎが衰退したことが挙げられよう。なお、戦前までは、出格子の家でも祭りの際には格子を外し、ミセの間を開放したという。

二階正面開口部

正面二階の開口部は、中央位置に幅一間程度の窓が設けられるに過ぎず、正面二階の大部分は下見板壁で覆われる。この窓は、室内側からはやや腰高の位置に設けられることが多い。建具は引き違い障子戸と雨戸、もしくは掛戸を併用し、前面を格子とする場合もある。

このような市場庄の妻入町屋の正面二階の開口部を、伊勢市周辺の妻入町屋に比較すると、伊勢市周辺の妻入門町屋では、二階開口部は間口のほぼ全長に及び、腰を低くして手摺を設けるなど、より開放性が高くなる傾向がある。こうした相違点は、市場庄と伊勢市周辺における町屋の二階の、居室としての成熟度の相違に起因するものと見られる。

 

3.主屋の平面とその使い方

配置

市場庄では街道は、ほぼ南北方向を指しており、屋敷地は街道の西側もしくは東側に位目する。敷地間口は八〜十間程度、奥行は位置によって、一五〜二五間程度と相当の差がある。このような敷地の形態や、敷地内での建物配置については、先に四章に述べた通りであり、主屋は敷地の南側に余地を残して北寄りに、街道に接して立つ。

出入口は、街道に面して正面の南寄り(伊勢寄り)の位置を占める「大戸口」のほか、カッテ部分での出入りに用いる南側面の「勝手口」があり、このほか通用口として常用される「脇戸口」が南側面に設けられる場合もある。(名称は地元での特定の呼称は得られなかったため、便宜上付けたものである)。また、北側面は隣接敷地際に位置しており、平面的には押入、戸棚、仏壇、床の間がこの位置に設けられるため、開口部の殆どない板壁となる。

平面の構成

市場庄の妻入町屋は相互によく似た平面構成を持っているが、土間の上手の居室の構成の相違によって三つの型を抽出することができる。また、上手の居室に対して、土間部分は市場庄の妻入町屋の特色を示す部分であり、ほぼ類似した構成となる。

三つの型の中で最も例数の多いのは、土間の上手に一列にミ

 

 

 

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