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農家においては、建物間口を長屋門でふさぎ、主屋は道に面していても出入口は設けられておらず、道に対して閉じたイメージを与える。市場庄においては、敷地間口を建物群てお、さぎ、庭を建物で囲むという観点から見れば農家的であるが、主屋が街道に対してミセを設け、正面性を主張するのは町屋的である

敷地境界

北側側面は主屋、その他付属屋といった建物郡で固められる。主屋については、北側面は平面的には押入・戸棚・仏壇・床の間がこの位置に設けられるため、窓などの開口部のほとんどないない閉鎖された板壁である。

南側側面では主屋は南面し、その他の付属屋も北側寄りに配置され、敷地の南側は庭として開放されているが、隣家の建物郡の壁が塀のようにたっているため、プライバシーの確保という点では特に問題はないようであり、特に隣家との堺を明示する塀のようなものは設けず、敷地境には排水溝のみが存在している。

フェンスや、コンクリート塀などの例も見られるが、周辺の家の近代化などに伴う最近の傾向と考えられる。

裏側は屋敷地の外側に田圃が続いている。屋敷地と田圃の境界は宅地裏にめぐらされた水路、またはあぜ道である。しかし、西側においては裏の道が途中でとぎれたり、畑地へ続いていたりと田圃との境界は曖昧である。

敷地における裏側の境界装置についてみても、生け垣やブロック塀などで裏側の敷地境を構築している場合と、納屋といった付属屋で構築される場合と、敷地境を特に明示するものもなくそのまま裏の道や畑へ続いている場合とがある。

 

7.市場庄と周辺の町並の敷地の配置形式の比較

市場庄の周辺集落との比較により、地域的特色や市場庄の独自性をみる。

街道沿いの集落と、街道沿いにない農村集落をみる。

街道は、伊勢街道と香良洲道、天正16(1588)年の蒲生氏郷の伊勢街道移設前の道とする。

伊勢街道沿いの集落として、雲津川以南の小野江、肥留、中林、中道、小津、そして三渡川を越えて六軒、市場庄、久米を、香良洲道沿いでは星合、笠松、小舟江、曽原を、そして移設前の街道沿いでは海沿いの松ヶ島を対象とした。農村集落としては、中ノ庄と上ノ庄を対象とした。

 

 

 

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