野 中 世界銀行としては、先ほどショートさんよりご指摘がありましたが、一定の役割を果たしたとは思うけれども、やはりこれから援助のクライテリアなり、援助する先というのを変更してほしいというお話がありましたね。それは実際にもう世界銀行の環境を考える部門の方たちは、具体的にお考えになっているわけですか。
木 村 さきほど、都市内交通を助けるべきだという1つの指摘がありましたが、将来、2020年には中国の都市人口が全人口の半分になると言われており、そういう意味では都市内交通に対する指導が大変重要であることは間違いありません。ただ、今度は経済メカニズムとして、都市内交通は現地の人々に任せられるし、任せるべきですね。都市部には自分たちで計画をし、対策を練るだけの力があり、援助機関が必ずしも口を出さなくてもいい、あるいは重点的にほかにやるべきことがあるというジレンマがありまして……。
野 中 今のはそういうようになってきたというのではなくて、ジレンマのお話ですね。
木 村 ですから、難しいところです。確かにご指摘のとおり、注目すべき対象はアーバンではありますが、援助の対象としては必ずしもそれが一番にはなり得ない、そういう問題があります。
野 中 ありがとうございました。さてどなたからも共通して出てきたポイントで今まで触れていないものとして、教育、情報公開というキーワードがございます。日本の場合も、GDP 国内総生産という経済成長をあらわす指標の60%以上は消費者の行動の数字が占めているわけです。つまり、消費者が何を考えるかということ、どういうライフスタイルを選択していくかということでかなりの部分が大きく変わっていくことだと考えるべきだと思うのです。しかし、そのときに、そのプレゼンテーションの仕方というのは非常に難しい。ここに知恵が要るというように思うのですが……。
木 村 文化ということからいいますと、いわゆる豊かさ、あるいは力のシンボルとしての車というものが最初に認識され、それから個室としての特殊な車の果たす役割が入ってきて、さらに豊かになっていけば、やがては単なる足としての道具となっていくという過程をたどっていくように思われるのですね。ですから、やはりそういうプロセスというのはやむを得ない。それだったら、効率の高い車、あるいはクリーンテクノロジー全般を最初から入れていくこと、それから都市計画についても、現在ある中国なら中国の都市のあり方を車の利用が最小限で済むような形で発展させていくというやり