? 交通の需要管理
一つは、環境とか交通需要管理への貢献です。車を使わないで、すべて公共交通でやろうというのは無理なので、車をうまく使っていこう。あるいはそのためにバスをできるだけうまく使おう。例えばシアトルのように都心部はマジックカーペットで、そこは全部無料にして、できるだけバスを使ってもらおう。そういう交通需要管理がかなり必要だろう。そういう操作性が一つです。
? 福祉と交通の折合
できれば福祉型車両とか、福祉型で特別に障害者・高齢者を送迎している部分と並行してそういう路線を設けると、その人たちがジャンジャン乗ってくれる可能性があります。そして、その後福祉型バスを統合しますと、コスト的にも少しは低減できるのではないか。障害を持つ人も特別に仕立てたバスではなく、そうではないバスにも乗れるという便益もございます。
? クロスセクターベネフィッ卜
三つ目がクロスセクターベネフィットを考えるということです。欧州でクランフィールド大学にヒアリングに行きましたが、80年代後半からすでに研究が始まっていました。交通が赤字でも福祉医療費が節約できるという効果論を説いています。ハンデキャブというリフト付きバンに乗っている人、あるいは患者輸送などに乗っている人。患者輸送ですと1回1万6000円とか、場合によっては2万ぐらい取られます。東京でやっているボランティアをベースにしているところでも、人件費等々をトータルで計算すると平均値で5〜6000円はかかります。もしその人がリフト付きバスに1回乗れたら、200円から6000円を引いて5800円の黒字になります。1日6人ぐらい車いすの人がハンデキャブに乗りますと3〜4万の節約になるわけで、バスの1日当たりの運行費用の損益分岐点にかなり近いところまでくると思います。そういう社会的な意味での見えない費用の足し算・引き算もそろそろやるべきだろうと思っています。
別の言い方をしますと、ノンステップバスが使える段階。次にドアツードアの送迎しか使えない段階。さらにお医者さんに往診してもらうとか、介護に来てもらう段階。最後は施設に入るわけですが、往診や施設に入所をできるかぎり遅らせるのはクロスセクターベネフィットで、そこに交通が非常に役に立ちます。ノンステップバスはそういう効用の一端を担っているはずです。残念ながら、その計算はまだできていませんが、そういう計算をすれば、コスト的にはこれだけの見えない費用がノンステップバスによってカバーされているということが言えるかもしれません。そういった部分を今後期待したいと思います。
最後に余談ですが、先週、広島で講演会がありまして、木村尚三郎さんの講演を聞いていたら、ダイアナさんになくてタイガー・ウッズにあるもの、そういうジョークをアメリカの記者が言ったそうです。グッドドライバーをタイガーウッズは持っている。それもいいドライバーを持っている。ダイアナさんは残念ながらグッドドライバーを持っていなかったので命を失った。