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一番大切なのは家庭なんですね。これ子供の頃から教え込まないとうまくない。

一番即効性が高いのは取り締まり、効き目が早い。ところが長続きしない。悪質が出てまいります。取締が厳しい社会っていうのはちょっと考えもんだと、まあ現在のような程度が最も理想的だと私は思っております。

今度は、歩行者個人、運転者個人の問題です。

昭和30年といいますと、丁度このモータリゼーションが始まった時期でございますね。その時、河北新報だと思いますが、電話がかかってきたんです。「どういうたちの人が事故に好かれるんでしょうか」と。どういうくせの人が事故に遭いやすいのかという質問です。「うちの方ではそういうことはやっておりませんので、国鉄さんにでも聞いてください」とこう申し上げた。そしたら、「基礎的な研究も大切でしょうが、命に関わる今の問題にもアドバイスいただけるような研究していただくと大変ありがたい」とこういわれたんです。

それを教授に申し上げたところ、「うん、全くそうだ。じゃぁ丸山君、それやんなさい」とこういう。「え、私、先生から基礎的テーマいただいて、そしてそれでもう手一杯なんでございますが、もはや」「映画館みたことあるかね」「はっ」「何本立でやっているかね」と、こういうわけですよ。「2本立でやってます」「じゃぁお前もできないはずはない」と、こういうわけです。「みんなでやるからね」と、こういうわけでね。

そうなんです。やはりね、そういう実際問題と共にやっぱり学問も歩かなきゃダメなんですよ。箱庭で、象牙の塔にこもっておっては、これはだめですね。それで、そういう実際問題の中からその基礎的テーマのヒントが出てくるんです。私はそういうやり方を取っておりますが、しかしこれやりますと、「二兎を追う者一兎をも得ず」とそういう結果になったわけですね。

どういう癖の人がというそういう質問は、我々の方でなんていうかといいますと、適性という言葉なんですね。これ嫌われる言葉ですが最近は余り嫌われなくなったんですな。昔は人をむいてないとかむいてるってふうにね、選分けるために使うというふうに考えられておったんですが、今はそうじゃないんです。今はあくまでもアドバイスなんです。

適正といっても2種類ございましてね、免許適性と心理適性。免許適正、これは視力ですね。次の心理適正、実は、こちらが大切なんです。心というのは働き、知・情・意、働きですね、ここ(頭)の。それから、一個人を全体としてみた場合に、ああ、あの人は根暗だとか、きつい人だとかとこういいます。全体としてみた場合に現れるのが性格とこういいます。それからもうひとつその人の考え方、安全視、これが影響してきますからね。こういう方面についてその人の特性を調べて、そして色々アドバイスすると。

学問的に「どういう癖の人が事故に好かれるか」ということに対するに答えるのに、15年かかったですな。まあ二本立てだからしょうがないんですけどね、15年かかった。それでそのあと、それを学問的に、これ一番最後に申し上げますけれども、きちんとまとめ上げるのに、さらに25年かかったんですよ。まあ、40年かかった。これが答えなわけ

 

 

 

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