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数多くのメニューを考えているわけですが、このメニューを組み合わせることによって、非常に効果のある考え方が出てくるのが交通需要管理の一つのミソです。

交通基盤の改善ということでは、道路ネットワークの整備、ボトルネックの解消、リバーシブルレーンの整備などがあります。リバーシブルレーンは開発局などで計画しているようですが、朝のラッシュ時には片側を1車線増やし、夕方は車の流れが逆方向になるので、逆方向の車線を増やします。1車線は常に弾力的に増減させる道路です。

二番目は、需要と供給の相互的協力で、運用の工夫と自動車以外の交通手段への転換です。パークアンドライドの施設をつくるとか、駅前広場をつくって、駅前にはできるだけ車の乗り入れをしないという考え方もあります。荷物輸送の効率性を上げていくという考え方、多乗車レーンというのもあります。多乗車レーンは、乗車人員の多い車が優先的に走ることができるもので、ニューヨークなどで行われています。また、トラックルートの整備、新交通システム、LRTなどを整備して公共交通機関を考えるやり方や道路交通情報を活用して空いている道路の情報を提供することで交通渋滞をなくすることができます。

三つ目は交通モードの調整です。通信手段による在宅勤務の奨励や勤務時間の変更ができるフレックスタイムなども考えられます。ノーカーデーはすでに行われています。トラック走行時間の推奨、多乗車優先措置、共同集配、集配時間帯の奨励、地域の相乗り組織、共同の車を保有して互いにあまりロスがないように使っていくという考え方もあります。ロードプライシングは、混んでいる道路はお金を徴収して、できるだけ交通の量を減らすという考え方です。あるいはTDMに対して積極的に助成するなどの政策が必要になります。

交通需要管理は、これから大事な考え方になってきます。

ここでちょっと視点を変えて、欧米の環境負荷の現状と対策をお話します。イギリスでは、環境インパクトは交通論議の中心課題になっています。世論の関心は大気汚染、気候変動などです。政府は持続的開発に責任を持って対応しようと考えています。交通政策ではトランジットモールやパークアンドライドの考え方が増えており、規制緩和によって地方では自動車が急増しています。また、都市再生、交通導線の一体化を行っていくというのがイギリスの考え方です。

トランジットモールというのは、基本的には都心部に一般車をできるだけ入れないという考え方です。バスあるいは一部タクシーといったものだけ乗り入れを許します。極端にいえばバスだけ走っているような街になっています。ロンドンのオックスフォードストリートでは広い歩道とバスとタクシーの乗り入れだけです。一方、オックスフォードの街ではトランジットモールが普及していて、通行はバスだけ、買い物はモールの中でやっています。もう一つのパークアンドライド・システムは、これもオックスフォードのものですが、駐車場をつくって、この駐車場から都心までは、

 

 

 

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