海氷数値モデルの歴史的発展および現状についてレビューを行った。海氷の変動をモデル化するには、海氷の生成、消滅、移動、変形の4つのプロセスを正しく記述する必要がある。本研究ではこの海氷の物理過程についてとりまとめを行った。海氷の運動を記述する3つの海氷モデルを取り上げその概要を述べた。これらのモデルはそれぞれ異なった特性を持っている。海氷の変動を数値的に取り扱う場合は、その特性を十分熟知しておく必要がある。
6.2 今後の課題
今後の課題として次が考えられる。
・19GHz水平偏波のみを使用した海氷密接度アルゴリズムは、オホーツク海における海氷に適用可能であることが明らかになった。しかし、風の影響等によって輝度温度のずれが生じることがあるほか、エラーデータが存在することが度々あったため、今後は多周波および多偏波のデータを用いたアルゴリズムを検討していく必要がある。
・大気中の水蒸気や海上風が輝度温度に与える影響を考慮したアルゴリズムを開発することが重要である。
・Landフィルターとweatherフィルターについてまだ改善の余地が残されている。
・RADARSAT画像から格子サイズと海氷密接度の関係を調べることが、密接度の定義を明らかにする上で重要である。
・SPOT、LANDSAT等の異なる衛星データとの比較を行うことにより、海氷状態を多面的に解析することができる。
・衛星観測結果と現場海域の海氷状態との比較が、海氷の実態把握にとって重要な課題であると考えられる。