第6章 まとめ
6.1 研究の成果
マイクロ波を利用した衛星による観測技術の発展が著しく、多くの地球観測分野において応用され始めている。本研究では、衛星によるリモートセンシング技術に関する文献を調査し、リモートセンシングの基礎的知識をまとめた。特にマイクロ波の基本特性の概要、およびマイクロ波放射計、散乱計、高度計を用いた海上風、波浪、海流等の測定原理について述べた。
海氷を衛星データから推定する解析手法について調査研究を行った。海氷のマイクロ波領域が輝度温度は、海氷の分布状況、海氷の厚さや冠雪によって影響を受ける。衛星からの測定は様々の種類の海氷を含んだ広い範囲の放射を反映している。海氷の種類によってマイクロ波領域における放射率が異なるために、様々の海氷の情報をマイクロ波から得ることができるなどの海氷のマイクロ波特性があり、これらの関係を前もって把握することにより、海氷に関する情報が推定される。本研究では主として、NASAアルゴリズムとComisoアルゴリズムを調査し内容をとりまとめた。
SSM/Iデータを用いてオホーツク海における海氷密接度推定アルゴリズムの検討を行った。これによると、NASAアルゴリズムはオホーツク海では密接度が低めに表される傾向があり、Comisoアルゴリズムは高めに表される傾向が示された。本研究で採用したアルゴリズムは、これらの中間的な値をとることが示され、推定した海氷分布は可視画像による海氷分布を良く表現し、オホーツク海における海氷密接度の推定に有用であることが明らかになった。しかし、これらはパラメータや代表的輝度温度の設定により値が左右されるため、今後、さらに十分な検討を行う必要がある。
Landフィルターとweatherフィルターは、密接度の推定に有効であることが示されたが、まだ改善の余地が残されている。
合成開口レーダを用いた海氷観測の有効性について、可視赤外センサとの比較を中心にまとめた。カナダの地球観測衛星RADARSATのScanSARモードによるオホーツク海の観測を実施した結果、500km四方の広い観測にもかかわらず、ScanSARの分解能は約100mであり、海氷の細かな構造を明瞭に把握できることがわかった。NOAAの可視画像と比較すると、可視画像では北海道付近が薄い雲に覆われ、海氷状態がほとんど識別できていない。RADARSATと紋別海氷レーダ画像は概ね対応関係が良いが、海氷レーダから遠方になると対応関係が悪くなっている。これらから、RADARSATのようなSAR画像は海氷観測に非常に有効な観測資料を提供することが明らかになる。