4.4 まとめと課題
マイクロ波を使う合成開口レーダ(SAR : Synthetic Aperture Radar)を用いた海氷観測の有効性について、可視赤外センサとの比較を中心にまとめた。SARは昼夜を問わず、また雲に覆われている海域についても海面の情報を観測可能であることが大きな利点である。
海氷のレーダ画像は積雪、海氷の表面粗度、誘電率などのパラメータに依存する。電波は海氷内部にある程度侵入するため、海氷の年齢、氷厚などによって後方散乱電力は変化する。概ね、氷厚が増していくに従って、海氷面が平らである限りは後方散乱電力は小さくなることが分かっている。
1998年2月8日の早朝5時半頃に、カナダの地球観測衛星RADARSATのScanSARモードによるオホーツク海の観測を実施した。500km四方の広い観測にもかかわらず、ScanSARの分解能は約100mであり、海氷の細かな構造を明瞭に把握できる。海流による渦状の構造とか、氷の起伏によると思われる輝度の明るいところ、また、氷厚などが周囲と違うことによると思われるパッチ状の暗部などが識別可能である。同日のひまわり、NOAAの可視画像と比較すると、可視画像では北海道付近が薄い雲に覆われ、海氷状態がほとんど識別できていない。また、NOAAの方が若干分解能に優れているものの、RADARSATのように細かな海氷構造を識別することは困難である。RADARSATと紋別海氷レーダ画像は概ね対応関係が良いが、海氷レーダから遠方になると対応関係が悪くなっている。RADARSATのようなSAR画像は海氷観測に非常に有効な観測資料を提供することは明瞭である。できればルーチン的な海氷解析に用いることができれば、オホーツク海の海上安全確保に大きく貢献することは間違いない。
今後の課題としては、次のような検討が可能である。
・RADARSAT画像から格子サイズと海氷密接度の関係を調べる
・SPOT、LANDSAT等の衛星データとの比較
・当日の現場海域の海氷状態との比較