4.3 1998年2月8日の観測結果
RADARSATのScanSARモードによる観測を1998年2月8日の5時31分に実施した。観測された画像を図4.6に示す。ScanSARモードでは約500km四方の領域を観測することができ、図示のようにほぼオホーツク海南部を一度に観測可能である。観測が行われた時刻は日本時間で早朝の5時半頃の日の出前であり、可視センサでは観測不可能な時刻である。また、冬季荒天による雲の影響を受けることもなく、レーダ画像の利点が発揮されている。
画面中央から左側にかけての海上に白っぽく写し出されているのが海氷である。海氷はびっしりと海面を覆い尽くしているのではなく、所々に黒い海面が顔を出している。また、海流によって海氷が流されたことによると考えられる渦状の構造が顕著である。海氷は北海道のオホーツク海沿岸にびっしりと張り付いており、その一部は知床半島を回り込んで国後島まで達していることが明瞭である。ScanSARの分解能は約100mであり、海氷の細かな微細構造がはっきりと分かる。海氷の輝度は場所によって異なる。紋別北方には輝度の明るい部分があり、氷が折り重なったような起伏のある表面状態になっていると推察される。また、サハリン東方では所々パッチ状に輝度の暗い部分があり、氷厚などの何らかのパラメータが周囲と比して変化していると思われる。
画面の右側1/3ほどは海面が写っている。黒いところは風速が弱く風波が十分発達していないところである。右上端付近の雲のようなセル状パターンは、風速がある程度強く、風波が十分発達していることに起因している。海氷縁から南東方向の風下に向かうにしたがって輝度が明るくなっているということは、風波がしだいに発達していることを示している。
図4.7には気象衛星ひまわりとNOAAの当日の可視画像を示す。当日は北海道付近に上層の薄い雲があり、オホーツク海沿岸付近の海氷状態はほとんど分からない。雲のない海域ではRADARSATに見られるような海氷分布を確認することができるものの、分解能が悪くなるため、細かな構造は把握できない。ひまわりとNOAAを比べると、NOAAの方が若干分解能に優れている。可視画像では太陽光の反射を見ることになるため、海氷部分は白一色となり、RADARSAT画像に見られるような海氷部分における輝度の違いは分からない。
図4.8にはRADARSAT画像の北海道付近拡大画像を示し、図4.9には北大紋別流氷研究施設のレーダデータを示す。両者を比べると、サロマ湖付近などの沿岸に近いところで海面が見える領域は非常に良く対応している。しかし、沿岸から離