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最初に実現させたのは1978年に米国が打ち上げた海洋観測衛星SEASATに搭載された海面散乱計SASSであった。しかし、SASSでは2方向からの観測しか行わなかったために、4種類の不確定な解が得られた。この解の不確定さを小さくするためには、3つ以上の方向からの観測が必要となる。これを実現したのが、SASSと同じファンビーム方式によるAMI/WindModeで、ERS-1及びERS-2に搭載している。AMIでは衛星軌道の片側だけしか観測できず、また運用はSARとのシェアリングで行う。日本が1996年9月に打ち上げたADEOSには米国が開発したNSCATが搭載された。NSCATもファンビーム方式で3方向から観測を行うが、衛星軌道の両側で合わせて1200km観測幅を持ち、2日で全球の90%の海域が観測可能である。図2.18にはNSCATのビーム照射パタンと観測幅を示す。1999年に日本が打ち上げ予定のADEOS-?には米国の開発するコニカル走査アンテナのSeaWinDSが搭載される予定である。この式では入射角の異なる2つのペンシルビームで海面の同一領域を最大4方向から観測する。この式の利点は、狭いアンテナ・ビーム内に電力を集中し高いSN比で観測でき弱い風速での観測信頼性が高いことと、棒状散乱計と異なり衛星直下付近の観測が可能なことである。

マイクロ波高度計では直下方向にビームを照射するが、この場合には準鏡面散乱が主要な散乱メカニズである。図2.16に示されるように、順鏡面散乱ではσ0は風速が増加すると共に減少する。しかしこの割合は小さく、マイクロ波高度計の風速測定精度は散乱計より低い。

 

海上風のアルゴリズムの例

SSM/I海上風速(1987-1993)は、海上風速(W)、水蒸気量(V)、および雲雨の水量(L)を定めるためにWenz(1989)が発展させた地球物理回帰アルゴリズムにより、22GHzと37GHzの鉛直偏波と37GHzの水平偏波を用いて求められる。このモデルは大気中の吸収と散乱、および風が乱した海面の放射率を説明し、雨粒によるミー散乱または凍った水による散乱を説明しない。1.5mm/hr以上の降水に対しては、モデルは放射の散乱のために有効でない。

ERS-1海上風速(1992-1993)は中程度の入射角では、sigma-naughtは風速およびincident radiation方向と風向の間の相対的な方位角の両方により変わる。測定されたsigma-naughtから風速ベクトルを計算するには、レーダーの幾何学的位置に対するsigma-naughtを風速に関係づける「モデル関数」と、計測されたsigma-naughtに一致する風速解のセットを用意する「wind retrievalアルゴリズム」と、wind retrievalアルゴリズムに

 

 

 

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