日本だと今、温暖化が問題だということを皆さん理解していただけるわけですが、アメリカ人だと「温暖化? どこが問題だ」という人たちがいっぱいいます。確かに科学的に全て正確にわかっているわけではないので、そういった反論に対して、説得していくのは難しいところもあります。でも毎日こんなに日本人が27キロ出していてアメリカ人はその倍出しているわけですよね。これが地球環境に影響を与えないはずはないと私たちは思っていますが、科学的に完全なコンセンサス、合意があるわけではない。こういう不確実性がある中で、対策をそれなりに打っていかなければなりません。
どんな対策があるか、炭素税、環境税などの議論があるわけですけども、産業界からは炭素税をかけたってどれほど救えるのかという話がまずひとつあります。70年代に私たちの先輩の世代が省エネを一生懸命やってきたと。その時なぜそうやったかというと石油の価格がどっと上がったからなんですね。数%ではなくて3割4割上がったから最終商品もすごく上がりました。
だから一生懸命やったわけですが、今そんな石油価格が何倍にもなるような炭素税をどう考えてもやれるはずがありません。国際的にも日本のエネルギー価格は高いですから、現実的な問題としてなかなか難しい。数%しかエネルギー価格を上げないような炭素税を導入したとき、それだけで果たして炭素の排出を抑えられるのかといったらかなり難しいと思います。
炭素税以外に規制でやるとすれば、電気を使っちゃいけない、車に乗っちゃいけないというようにがんじがらめの堅苦しい社会しか私たちの将来にはないという暗いイメージが湧いたりします。また、地球温暖化問題は非常に難しい、大事な問題だと思っているけれども、そんながんじがらめの社会というのは望ましい社会ではない。そういう中で、教育的なこと、自主的な取り組みをやったらどうかといったら、それは自主的に車を乗るのを止めましょうねとか、電気をケチケチ使いましょうねとか、リサイクル運動を一生懸命やりましょうねとかいうことですが、これにも限界がある。規制的なやり方とか炭素税とかのやり方を組み合わせてやっていかなければいけないんですが、ではどういう組み合わせが一番いいのかと言ったらそれこそ不確定で誰もわかっていない。政府もわかっていない。これもいいし、あれもいいし、とアイデアはあるんだけれど、どれをどれだけやったらどうなるかということは実はよくわかっていない。こういった問題がひとつあります。
地球温暖化問題は南北問題でもある
それからもうひとつ、被害者と加害者の問題なんですが、地球温暖化問題は単純化してしまえば、ぼくら先進国、日本、アメリカ、ヨーロッパの人たち、現代の世代の若い人たちが二酸化炭素をいっぱい出していて、どういう人たちが被害を受けるかというと北のほうに住んでいる人たちは地球の温度が上がっても冬の暖房費が少なくなるとか冬の寒さが緩和するとか結構メリットがあるわけです。ところが南のほうの人たち、今でも暖かいところに住んでいて熱帯病なんかをいっぱい抱えていて、これからどんどん気温が上がっていくとより台風が増えてしまう。気温が高い、熱帯病が深刻になるわ、食料生産の影響は出るわということで、将来の南の人たち、途上国の人たちが影響を受ける。加害者と被害者というのがちょっと切り放されてしまっていて、僕らが二酸化炭素を出しているという実感のないのに加えて、ぼくらが加害者だ、悪いことをしているという実感がなかなか湧きにくい。
あともうひとつ、生態系への影響がすごく気になります。人間を除いた生物が地球の温暖化を引き起こしている責任は基本的にはないといってもいいと思うんですけど、世代間の公平さの問題と南と北の公平さの問題と人間と生物の公平さの問題、そうした被害者と加害者は実は