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連邦と州の規制権が競合した場合、これらのメリット・デメリットが比較衡量され、どちらによる規制が適しているかが判断される。たとえば証券市場は公共財としての性質が強く、連邦法による統一的な規制が望ましいとして証券取引法が制定されている。反対に、会社法や労働法などは各州が独自に制定し、州法による制度間競争が活発に行なわれてる。特に会社法は、会社設立に有利な法や株主に有利な法などが競合し、制度間競争の中でバランスのとれた法が模索され、州による規制のメリットが具体的に現れている。労働法においても労働組合を優遇する法や、逆に労働権を定めて企業が進出しやすいようにした法などが競合している。また環境や安全に関わる規制は、連邦と州の二元的な規制が行われている。その方式は、まず連邦政府官庁がそれそれ独自のかなり細かなところまで踏み込んだ規制案を公表し、その実施を命じ、それに加えて各州が独自の規制を法制化するというのが一般的である。

 

(3)州法による制度間競争の産業支援策への反映

 

会社法や労働法にみられる州による制度間競争は、各州による企業優遇を中心とする産業支援策にも現れている。ジョージア州に見られる税制上の優遇措置・産業融資、フロリダ州の強度に安定した労働権、サウスカロライナ州の職業訓練プログラム、アーカンソー州のデーターベースを利用して州内の取引をしやすくするクロスマッチプログラムなどの政策を、様々な立法を通して行っている。連邦政府が研究開発への補助金や戦略産業の輸出環境整備のための立法などを通じて、文字どおり産業の育成を目的にしているのに対し、各州は企業誘致とその結果期待される雇用創出等の効果のためにこれらの政策を行っているのが特徴である。

各州が他の州、そして時には連邦政府と競合関係にありながら、独自の産業支援策を行うのは、各地域の将来像のちがいや立地的特色や人口分布的特色を生かした政策が出来ると同時に、州・連邦政府等の行政機関の間の制度間競争を活発にし、効率性とイノベーションを改善し、よりよいシステムを目指す上で有効であるところにも大きなメリットがある。それゆえ州政府の産業支援策を評価する上では、州の特色をどこまで活かしているのか、そしてその目的に対してどれほどの成果を上げているのかという2点に加え、結果と

 

 

 

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