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して制度間競争にいかに貢献しているかも見逃せないポイントであろう。これらを念頭に、各州の産業支援策の具体的な内容については、「第3章 各州の産業支援策」で述べることとする。

 

(4)各州の産業支援策への連邦の影響力

 

経済における州と連邦政府の役割は比較的安定してきた。一般的にいって、全国的基準や輸送・通信システムなど均一性の必要がある場合には連邦の関与が強くなり、そのほかの場合には州政府プログラムの多様性が望ましいとされる傾向にある。前述のように、州政府の政策や規制の不一致は、市場をバラバラにするため、規模の生産性という点でデメリットがあり、州の産業支援策に関しても、規模の生産性が働くような、均一性が望まれる分野については連邦の影響力が強くなると言える。ただそうした場合でも、連邦が一方的な影響力を持つのではなく、どのレベルの政府が責任を持つかには微妙なバランスが必要であり、多くの場合は責任を共有することが必要とされる。逆に、州が独自に行う産業支援策のうち、特に職業訓練や地域開発などにおいては州の役割と責任が強く、州政府のフレキシビリティも大きい。

また、先に述べたとおり、連邦は戦略産業の育成を、州は企業誘致とその効用を目的にそれぞれ産業支援策を行う傾向があるが、各州の産業支援策が連邦の選んだ戦略産業に合致しなければならないということはない。産業支援策を活発に行うクリントン政権においても、「多様な地域社会の問題に、より創造的で事態即応的な解決を促進するために、権限が州、地方と個人に委譲されるべきである」という考え方は、依然広くアメリカで支持されている。とはいっても、州が連邦の産業支援策を利用した形での政策を行う場合、連邦政府は州が管理している支出も含む全支出が、連邦が意図する方法と目的に沿った形で使われるようにすることに強い関心を持っており、野放しに権限が委譲されているのではない。(注1)

連邦が州の産業支援策に影響を与える手段には、第一に、特定共同負担補助金(連邦政府が州のプログラムの全費用のうら一部を負担する補助金)、特定非折半補助金(特定の目的のための資金を提供する補助金で州が自らの資金を支払う必要かない)、上限付き共同負担補助金(連邦政府の負担に上限が課された補肋金)などの補助金が上げられる。1995年次には、2,280 億ドル以上の補助金が、連邦政府から州政府に付与された。 第二に、法律も重要な手段である。たとえば、州に強い権限を委譲した職業訓練協力法が、必ずしも良い結果を出さないことが明らかになったとき、今度は又新しい立法を通じて連邦の規制を強めたというケースはこれにあたる。概して言えることは、連邦が主体となって人種間の平等を各州に要求する社会政策や、独占などを取り締まる産業規制などは、州の意思に関わらず実施を求められるのとは異なり、産業支援策は、連邦のそれを州が各自の目的に合わせて利用することが出来るのが特色である。逆に言えば、多くの州や国家全体でのニーズの大きい産業に対して連邦が支援策を整備するのである。

 

 

 

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