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第1章 連邦法と州法の関係について

 

(1)連邦法と州法の二元性

 

アメリカにおいて、一般的に連邦と州はどのような力関係にあるのだろうか。アメリカ連邦制の基本的な考え方は「まず独立国家的な存在の州があり、連邦の権限はすべて、州の合意により初めて創り出される」というものである。法律についても同様で、アメリカ連邦憲法は州法の規制を一般的とし、連邦法の領域は制定法として限定的に列挙されている事項のみである。

したがって連邦政府は、憲法により特に連邦議会の権限に服するものとされる事項についてのみ規制する。それは国防、外交、連邦レベルでの税制など主として州際及び国際関係に関するものであり、日常生活に関する一般的な法規制を行なう権限は州に帰属している。

ただし、両者の線引きは時と場合によって揺れ動く。連邦の権限として憲法に列挙され.ている範囲内においても、連邦の専権とされるもの以外には州の規制権が及びうるからである。ここで問題となるのは、州内の事項のどこまで連邦議会の権限が及ぶかということ、及び連邦議会が権限を行使していない場合に、州が州際通商にどこまで制限を設けうるかということであろう。

前者については、時代によって差異はあるものの、連邦の州際通商規制権が広く認められており、連邦議会の権限は州際通商に密接で実質的関連性を有する州内の行為まで及ぶ。後者については、連邦法と州法が並行的に存在するときは双方とも適応され、両者が矛盾するときは連邦の法が州法に優先するのはよいとして、州際通商について連邦議会が沈黙している場合、州は規制を及ぼしうるがそれは州による規制の必要性と州際通商への影響を比較衡量することで制限される。

 

(2)各法による規制のメリット・デメリット

 

上のように、アメリカにおいては、連邦法と州法が二元的に存在しているわけだが、両者による規制の違いにはどのようなものがあるのだろうか。こうした違いはケースバイケースで現れるものではあるが、以下にそのメリット・デメリットを一般的な観点からまとめてみよう。

 

 

 

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