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きな声では言えませんけれども、こんなことやってますよ」などとしばしば聞かされます。でもそんなことを学会で言ったら、「そんな根拠薄弱な証拠を挙げて、田村先生は自分の理論を正当化するのですか」と言われます。

最後の質問なのですけれども、まさにBさんが、長年日本の方々とやりあってきて、最後に絶望感を(笑)。これはBさんの経験からすればきっとそうだろうとは思いますが、私が思うのは、ある一点からフォーカスした答えを出しますと、日本において独禁法を機能させるための、いちばんいい特効薬は何かというと、会社がつぶれることだと思っています。会社がつぶれて、改質させられることに対して、日本人が慣れ始めた途端に日本社会は大きく変わると思います。これは、おそらくBさんもおわかりだと思いますが、なぜ日本の独禁法が建前的で床の間的なのかと言いますと、独禁法がきちんと運用されていると、参入と退出の自由が保障され、新たな挑戦者は市場へ入ってきて、成果を見せ、それと同時に、きちんとやれていないところはつぶれていくわけです。しかし、日本社会は何をしてきたかというと、需給調整条項といわれるものが長年はびこり、通信の世界では法律上、需給調整条項があり、通産省などが事業者団体を通じて、マーケットから退出することを事実上認めていなかった。つまり、日米では独禁法は最初から哲学がまったく違っていた。アメリカの言っている独禁法などは、日本は毛頭考えてなかったということが、50年間で完全に暴露されたわけです。日本社会は長年これを建前上認めようとしなかった。けれども、今回大きな所もつぶれるし、社会において決してさぼっていなかった人たちが、急に失業するような状況が起きれば、全く違う発想でいこうということが出てくる。

その際に、法制度改革の意味で、そこに何のインプリケーションがあるかというと、これからはムラ社会の延長線上である会社、あるいは組織に対する考え方はなくなり、「私は別にムラを出てもいいよ」という考え方に変わるわけです。その途端に何をするかというと、「私の正義が果たされなかった分は、裁判で取り戻させてもらいますよ」ということになってくると私は思うのです。もちろん、そのためにはもう少し司法が整備されなければいけませんが、今アイアントライアングルが完全に崩れつつあり、崩れ始めれば、小さな司法政策のようなことをいう時代は終わると思います。私は、すぐにとは言いませんが、これで変わるのではないかと思っています。

 

 

 

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