日本財団 図書館


政治的な形で問題を解決し、法律などは関係ない、自分たちの事実上の法の世界があるのだというような、法の枠外で解決しようとすることは、最後は決して生産的な結果を生まないのです。ですから、日本人がよく考えなければいけないのは、和の精神やなれあいの精神でやるとか、アメリカ側が要求してきたら、「仕方がない、このセクターの一部でもちょっと提供したら静かになるから」などということを言っている限りは、真の問題解決は成されないわけです。日本は自分たちの哲学も持たずに、アメリカに怒られたときには、根底にある問題を解決せず、とりあえずその場しのぎの答えを出して、「まあ、これでしばらく黙っていてください」というようなことしかやってきていない。そういう意味で、貿易摩擦に対して、例えば独禁法なども含め、法律をきちんと強化し、法律で公平なアクセスを認めれば、例えばアメリカがまた文句を言ってきたとしても、その部分が確保されていることを、日本が自信を持って言え、全く恐れることなく、反論して闘えるわけです。そうすれば、表へ出て争おうと言えるのですけれども、そこの部分を全然答えていませんから、いつまで経っても、問題解決の際に負い目を感じざるを得ないわけです。

あるいは、金融スキャンダルについても、上にいる人たちはほとんど、何らかの形で違法性を帯びたことをやっている。しかし、例えば法律のラインがここだとすると、ここからグレーゾーンというのがあって、この中のどこに一線を引いて運用するかというところで、今検察は頭を痛めていると言われています。

すなわち、やっていることは一応みんな悪いのだけれども、例えば書いてある法律の通りにやったとしたら、これはもう対処しきれないくらい人を逮捕してこなければならない。これはできない。では、どこか上の方に線を引くかといっても、今度は公平感の問題から、ここに線を引いたら不公平ではないかと言われるかもしれない。そういうことで、ものすごく頭を痛めることになっている。結局、本当は違法だと思われるものに関して、そんなに杓子定規に、線を越えたら全部違反にするということは言わないにしても、交通違反で言えば、80キロ制限の高速を90キロで走っていても捕まえないのと同じで、100キロを越えたら捕まえようかという程度の考え方をきちんとやっていればよかったのに、実は日本の金融の世界では、皆さんご存じの通り、80キロのスピード制限のところを150キロ、180キロでも、全部許されていたという世界があるわけです。

今になって、これをどうするという場合には、過去において運用しなかったというこ

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION