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能させることによって、別の意味での法律の世界がそこに生まれてくるということなのです。

それから、自己責任についても、法的に自分が責任を持って生きていけるようなシステムが必要だということになるのです。気に入らないことがあれば、それはやはり、訴訟しなければいけないこともあるかもしれない。例えば総会屋問題でも、損失補填でも、もし法律が機能している社会であれば、これは表へ出して争ってもよかったわけです。しかし、結局機能しないということで、英語ふうに言うと、「take the low into his own house」という言い方がありますけれども、法律を自分の世界へ引っ張っていって、自分で問題を解決するという、実に不幸な世界が展開していたわけです。だからといって、今の金融の世界の人たちが許されるというわけではないといえばそれまでですけれども、もしこの社会が、法律に対してもう少し前向きであったとすれば、おそらく、そういう人たちは、そういうことに手を染めないで済んだかもしれないのです。

2番では、少し大きな話になってしまいますが、日本の大学では、学生が法学部にきている意味をほとんど感じないような世界がある。司法試験も慶應で1学年5名から、せいぜい10名ぐらいしか受からないとなると、なぜ法解釈学で、先生のつまらない授業を聞かなければいけないのかわからない。しかし現実には、例えば銀行に行った学生でも、「銀行の取り引きって、全部法律問題じゃないですか」と言います。「何で、勉強しないで、こんなのをやっていけるって言えるんだ。先生、ぼくはもっと勉強しなきゃいけないと思いました」と言ってくれる。きちんとした学生はこう言うのです。これは、お客においしい話だけを言って「お金を借りなさい」というのとは違って、きちんとした意識を持って、自分のリスクヘッジも含めて、説得しなければいけないという世界を考えている。こういう発想が、もっと必要だと思うのです。

それから、インターネットを通じてというのは、これは藤沢キャンパスの総合政策学部、環境情報学部で考えていることなのですけれども、法律情報を国民に開示していく際に、国民がどこかへ行けば見られるというのではだめで、家でもすぐに見られるような世界を作らなければいけない。私としては、法学教育をやりながら、法律を身近に感じる世界を作ろうというのが、ひとつの考え方としてあります。

それから、3番目にいきまして、金融スキャンダル、貿易摩擦について、先ほどお渡しした資料の1でも、貿易摩擦の解決策としての法の使い方を書いていますが、結局、

 

 

 

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