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行政手続法は一生懸命がんばって、なんとかここまでこぎつけたのですが、行政に対しての抑制が効くようなものには、結局ならなかった。

面白い例では、3年ほど前のちょうど行政手続法ができた直後、九州の方のガス事業に新規参入しようとした天草ガスという会社に対して、通産省の九州の支局は、すでにいる業者と相談して、皆の合意が得られたらOKすると、行政指導で言ったそうです。少しでもマーケットのことをわかっている方たちならお分かりだと思いますが、新規参入しようとしているものを、他の連中がOKと言うようなことは、通常はなく、何かの理由をつけて「だめだ」と言うわけです。それを通産省が、いじわるだったのかわかりませんけれども、合意をもらってきたら認可すると言ったようです。天草ガスは、「挑戦者としてきているのだから、合意など得られないから、それを文書に書いてくれ」と言ったのです。すると通産省は怒ったそうです。それで天草ガスは、通産省に真っ正面から闘っては認可されなくなってしまい、だめなので、第三者を使って闘うしかないということで、行政手続法はどうなったのですかと言って、経団連に助けを求めたわけです。すると、文書を求めたのに書いてくれなかったということを表ざたにした途端、通産省は数日後に「そんな指導をした覚えはない」と言って、だから文書は書く必要もない、認可はするといって逃げたということです。文書に書かされた場合には、通産省はそんなことを言っているのかと、ずっと記録に残りますから、やはり文書はどうしても書きたくなかったのでしょうか。

いずれにしろ、行政手続法で努力をしてはいるのですが、これも、最近あまり聞かなくなったと言えるかと思います。

それから、レジュメの方に戻りまして、2の(2)「裁判官の官僚化」なのですが、司法というものは、一応独立はしていますが、最高裁の裁判官の任命は、内閣総理大臣が行うという形になっています。しかし、総理大臣が任命するといっても、総理大臣が、だれが最高裁の裁判官に適しているかなんて、知っていることはほとんどないわけです。どこかからリストが出てきて、それを見て決める。そのリストは、誰かがコントロールしているわけです。そして、その下にある高等裁判所、地方裁判所の裁判官は、最高裁の裁判官のシステムの中で任命を受けている。そこで、本来は個々の裁判官が独立しなければいけないのに、反発するような判断がなかなかできない。そして、裁判機構というものは、最高裁以下は非常にこぢんまりとまとまる世界があるのです。これでは三権

 

 

 

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