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要するに、作った法律というものは、行政にとっては非常に扱いやすいものであるから、それをいちいちタッチしないでくれという風潮があるのです。

さらに、今の5段階の話を越えて問題なのは、行政指導、これは元のレジュメに戻りますけれども、行政が法であるということは、今の私の説明で、言葉足らずではありましたけれども、この?@から?Dまでの流れでわかるように、行政は事実上法を操ることが可能なわけです。操るといっても、文書にして、法にのっとってやっている限りは、まだ文句は言えないのですけれども、実は、そこから次の問題として、行政指導の問題が出てくるわけです。それは何かというと、行政は、法律の書き方を非常におおざっぱに書くのです。ですから、法律家から見た場合には、通常はもう少しピンポイントで、焦点の合った書き方をしなければいけないのに、必ず裁量の余地があるような書き方をして、しかもチェックを事実上受けませんから、そのように書いておけば、行政指導の領域がいくらでも広げられるわけです。つまり、裁量の余地があるかのように書いてあるのだから、その範囲でやっていると弁明される。これはいくらでもやれてしまう。そういうことで、法律、あるいは政令以下のものに対して、何のチェックも働かない中では、当然の産物として行政指導が生まれてくるということになる。

さらに、行政訴訟を実際上起こしにくいことを考えると、最後のチェック機能も働かないということになります。

それから、行政による紛争解決について、レジュメの1の2の最後の中程にありますが、面白いことに、司法が機能しない理由のひとつに、行政が問題解決まで行ってしまっているということがあります。わかりやすい例で言えば、消費者生活センターのようなものが挙げられるかもしれません。多くの場合、消費者は法に訴えることはせずに、行政がやっている機関に助けを求め、問題解決を図る。

すなわち、行政は紛争解決という視点からも法律に関与している。私が調べたわけではないので勝手なことは言えないのですが、アメリカの文献によれば、日本においては自動車事故の保険の問題解決においても、行政が絡んでいて、当事者が何の関与もできないようなシステムができあがっているという話です。日本人の感覚として、自動車事故を起こしたときに、いちいち相手とやり合わなければいけないと思うと嫌だということがあると思います。ですからそういう意味では、すごく助かるのですが、その結果、われわれの見えないところで、利益があがるシステムができ上がっているということなのです。

 

 

 

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