日本財団 図書館


ないというように、欧米にみられることを恐れたわけです。

そこで、法律を持たなければならないという発想で、当時の著名な方々はヨーロッパに調べに行ったわけです。その際に、もともと法律が必要だと思って導入したのではなくて、今のように、ばかにされないための法律をどのような形で設けるかを考え、基本的には、中央が権力を手放さない形での法律の導入をしたかったのです。

それはどういうところにみられるかというと、イギリスやアメリカなどの制度、特に日本はイギリスに対する憧れが非常に強くあって、他の部分はかなりイギリスのシステムを導入しているのに、なぜかイギリス、そしてアメリカの法律の導入を避けてきた。それは、おわかりのように、かなり民間レベルで法律を運用できるようにしている英米法体系のシステムだからです。これは当時調べに行った日本の人たちにとっては、導入するわけにはいかず、むしろ導入できるのは、ドイツ、フランスなどの、どちらかというと理論的に、最初から国が作り上げて整備された、ドイツの憲法などをはじめとしたものをそのまま輸入して、中央集権を維持できる法律にしようとしたわけです。

そこで、「床の間におかれた飾りもの」と書きましたけれども、これで面白かったのは、私がアメリカのジョージタウン大学でアメリカ人の学生に日本法教え、それで、いちばん初めにぶつかった壁は何かというと、いきなり日本法の講義を行っても、アメリカ人は私の話していることがよくわからない。どうしてかというと、日本の文化を説明しない限り「なぜ書いてあることとやっていることが違うんだ」という話ばかりになる。彼らは英文に訳されたものを予習してきているから「書いてあるからこうでしょう」と、私はさんざん責められるわけです。それで、「いや、違うんだ。背景にはこういう発想があるから」と説明するのだけれども、「法律に書いてあれば、これを使って裁判をすりゃ勝てるじゃないか」などという応酬で、最初の講義は全然学生を説得できませんでした。

それで、私は考え直しまして、法文化の週をその後3週間ぐらいやりました。つまり、日本の法律はアメリカ人が考えている法律ではありませんと、法文化の話をするところから入らざるをえなかった。その中で、アメリカのある論文のなかに書かれていたことで、私はその言葉に救われたのですが、その中に「日本の法律は、床の間におかれた飾りもののようなものだ」と書いてあって、それを読ませることによって、学生がやっと、納得はしていないんのですけれども、「そんなものなのか、仕方がないな」というふう

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION