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日は、細かい各論に入ると、イントロダクションとしての意味をなさないと思いますので、むしろ、それぞれ触りだけを紹介させていただいて、後ほど必要な部分については詳しく説明するというふうにさせていただきたいと思います。

それでは、このレジュメに沿ってみていただきたいのですけれども、ここにはAさんのように弁護士の方もいらして、同様に感じられておられるかもしれませんが、法律の限界を感じさせられています。例えば、独占禁止法のみを一生懸命研究しても、この日本においては、独占禁止法が社会に根づくわけではないという話をさせていただきますが、若干専門外の部分もありますので、Aさんなどに少し補足していただけるようであれば、お願いしたいと思います。

まず、1番の「日本人と法」というところなのですが、私はずっと興味本位でやってきたのですが、日本の法の歴史をみていきますと、面白い背景があります。何かというと、日本はムラ社会という形で、ムラの中の掟を守ればいいという社会をつくっていたわけです。ムラ単位で考えると、ご存じのように、ムラから外へ出るということに関して、日本社会の場合は、その社会から出されてしまうと自分は終わりだという限界があるわけですから、その社会の中でなんとか生きることを考えざるを得ない。つまり、紛争を起こすわけにはなかなかいかないという世界があるわけです。

それから歴史的経緯を経て、この辺の話は皆さんもある程度ご存じというか、日本人としての感覚としてお持ちだと思いますけれども、要は、自分のいる組織の中で問題を起こすようでは、結局追い出される。かといって他で吸収してもらうことはできない。例えば、今の労働力のモビリティの問題も、ご存じのように、いったん何かで会社をやめれば、たとえ自分の考えが正しかったとしても、反発して出てしまったら他に受け入れ先がないわけです。つまり、気に入らなくてもその中でがまんしなければいけないという考え方は、ムラが会社という形に変わってきただけなのです。そこで面白いのは、アジアで世界の植民地化が1800年代に入って進みましたが、唯一日本だけが、残されたアジアの大きな独立国家だったわけですが、この流れで、明治維新の際に、一体日本は何を考えたのかというと、ヨーロッパに相手にされる国にならなければいけないと。まずはもちろん、武力的に均衡を保たなければならないという大きな命題もあると同時に、ばかにされない国にならなければならないと。法律の観点から、それは何だったかというと、アジアは野蛮国家で、法律を持たない。だから法律を持っていない国は国家では

 

 

 

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