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季における快適な旅行の実現、冷暖房がされ給湯が24時間可能な快適な宿泊施設の整備等を推進する必要がある。また、春節等の伝統的な行催事への海外旅行者の参加、ホームステイ制度の導入等閑散期の観光魅力の発掘に取り組むことも忘れてはならない。

全ての行程を終わって、海抜3600mのカラクリ湖畔に設けられたパオの中で寝ころびながら、これまでの3回の調査を踏まえて、これだけ広大な地域に多様な歴史文化資源等が多数存在する中国のシルクロード旅行を今後どうすれば推進することが出来るかを皆で話し合った。その結果、シルクロードの主要な観光地を限られた期間内にめぐり、その魅力を誰もが楽しく味わえるようなモデル周遊コースを設定することを考えてはどうかと言うことになった。具体的には北京または上海から空路西安に入り、2週間かけて敦煌、トルファン、クチャ、カシュガルと回って主要な歴史文化資源を訪れて帰って来るというコースである。主要観光地間の移動は可能な限り航空か鉄道によるものとしてバスによる移動は最小限にし、期間も2週間以内が望ましいのではないかということになった。

このような周遊旅行が盛んになることにより、他のシルクロードに存在する観光資源に対する関心も増し、将来的には地域全体が観光により潤うことが可能になってくるのではないかと思われる。

帰りに立ち寄った北京にある国立歴史博物館の展示は展示品も豊富で良く整備されており、ブローシャー等も多様なものが提供されていて、中国の歴史・文化の基礎知識を得る上で大いに役に立つものである。シルクロード旅行に出かける前に周遊旅行の一環として立ち寄ることは事前のオリエンテイションとして有益であり、旅の魅力を増すものと思われる。

今回の新疆ウィグル自治区の調査により、シルクロード観光促進委員会としては中国国内のシルクロードについて、武威、酒泉、天山北路や西域南路の主要観光資源等についての現地調査はなしえなかったものの、一通りの調査を終えたこととなる。地域によって多少の差はあるものの、交通通信施設の整備が進み、温かいお湯の出る冷暖房付きのホテルの建設も相次ぎ、中国域内のシルクロード旅行は改善すべき点は多々あるものの、多くの人々がより快適に旅行できる方向に進みつつあることがうかがわれた。これまで夏期を中心に限られていた旅行シーズンも気候条件の厳しい冬季を含めて通年化できる日も遠くはないものと思われる。その結果、より多くの人々をシルクロードに誘致する事が可能となり、旅行・観光事業を安定的に経営する事ができるようになり、観光開発が進むことが期待される。

中国のシルクロード旅行の開発が進むことにより、国境を越えたシルクロード沿いの中央アジア諸国等の観光開発にもその影響が及び、進展することが期待される。

1997年1月の「奈良シルクロード・トラベル・フォーラム」においては、中央アジア諸国のシルクロード旅行について、現地情報が少ない、交通通信の不便、宿泊施設の不備、食事の単調さ、ビザ取得の困難、日本語ガイドの不在等が指摘されていた。この様な指摘は10数年前に中国域内のシルクロード旅行について指摘されたものとほぼ変わらないものである。

 

 

 

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