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流でありますので少しご感想を、3分ないしは5分の制限時間内で、崔先生、ラゾ先生の順番でコメントを頂戴したいと思います。そのあと我々3人が少しアジアを射程に入れながら、この議論を続けたいと思います。よろしくお願いします。

 

崔: はい、わかりました。

シンポジウムにご招待いただいてうれしく思っています。私がここで申し上げたいのは、観光開発の性質というのは非常に複雑だということです。観光開発にはいろいろな側面があり、教育もありますし、環境保護、地域社会の人々の参加をいかに仰いでいくかということも重要です。それからホテル、レストランといった八ード設備の開発、そして観光客に対する通訳を配備するということも重要です。

しかし観光開発、文化開発において最も重要なのは、ステップ・バイ・ステップのアプローチなのではないかと思うわけです。つまり長期的な観点を忘れないということです。段階毎に進めていくということです。文化・観光というのは、2年、3年、5年というタイムスパンではだめです。10年以上の観点方必要でしょう。いろいろな側面がかかわっていますから、あまり急いでしまいますと、文化・観光開発が失敗してしまうことになります。

地元の地域社会においては、そのコミュニティー自体でマスタープランを、自分たちが何をしたいのかというプランを自主的に作る必要があるでしょう。この開発というのは単独で存在するわけではありません。観光の一般的なマスタープランと地域社会の人々の間に強いリンケージというのでしょうか、関係が重要ではないかと思うのです。

 

高 田: 我々日本人は、これまで投資したお金は10年間で回収する、もっと短い期間に回収するという非常にスピーディーな経済活動をやってきたわけでありますけれども、観光開発、中でも地域の人々が自分たちの地域の良さを見つけて、それで人を引きつけるという事業は、息の長い事業ですよ。非常にいいコメントをちょうだいしたのではなかろうかと思います。

もうお一方、フィリピン政府観光省のラゾ先生、よろしくお願いします。

 

ラ ゾ: 私どもの経験を考えてみますと、国内の観光ということが非常に重要だと思うのです。私が強調したいのは、地元の地域社会の人たちが観光のメリットがどこにあるのかということを十分認識するということです。

つまり観光というのは学際的というんでしょうか、いろいろな側面、いろいろな社会の分野がかかわったものです。いろいろな県や自治体の代表の方も今回参加をなさっておられると思うんですが、政治家として観光から上がってくるメリットをいかにコントロールをしていくかということも重要です。それプラス観光と環境の重要性ということです。

次に教育の重要性ということです。フィリピンでもフィリピンの青少年に観光に関する教育を進めています。これは政府のプログラムの一部として、大統領の考え方もあり、若い人たちが観光できるようなプログラムをつくるということです。

観光と文化ということを考えた場合に、フィリピンでは既に修復や保存の仕事を始めています。いろいろな遺産の修復や保存に専門知識を持つ外国のご協力もいただいております。

私たちがどういうことをやろうとも、私たちはいつも長期的な投資という観点、つまり持続可能な開発という観点からものを見ていかなければいけません。我々の子孫にそれはどういうインパクトを及ぼすのかということを考えていく。それによって子孫に対してできるだけ選択の幅を広く残すためにもそういう観点を加えて、将来像を描きながら考えることが必要でしょう。これはどんな観光開発でも非常に重要な点だと思いますし、フィリピンの経験を皆さんにご紹介できたことをとてもうれしく思います。

以上です。

 

高 田: お二方にコメントをちょうだいいたしましたけど、今ラゾさんがおっしゃったように、国内の観光も大事なんですよね。「国際観光交流に於ける地域文化の活用」が今日のテーマでありますけれども。

先ほどから申しておりますように、あるいは、皆さんがおっしゃってるように、自分の地域に魅力が見つけられないのに人が呼べるか。それは日本全体ということを考えたときには、日本の魅力を高め、日本人自身がもう一度この日本の中を旅して楽しめるような、そういう地域づくりをすることが大事だという指摘につながるのではなかろうかと思います。そういうものはそう簡単にできない。だから未来を長期的にながめながら、ゆっくり、必ずしもゆっくりするのがいいかどうかはわかりませんが、長期的な視野に立ってやりなさいよという、崔先生のご指摘も肝に銘じる必要があるのではなかろうか。

実はお二方、アジアの国からいらっしゃったわけですけど、今アジアの諸国では観光を中心にした地域づくりが非常に盛んになっております。例えば今日はお見えになってませんけれども、マレーシアという国、これは国際観光にも非常に熱心であります。人々が自分の国土のあらゆる場所を見ようということで、国内観光も非常に盛んであります。首都のクアラルンプールから東マレーシアのサバとかサラワクの地域を旅行する、というようなことも非常に盛んにやっておられます。

いよいよこのシンポジウム、時間が押して、あと15分になってしまったわけでありますけれども、そういうアジアの国々に関心を集中いたしまして、それらの地域で我々はどんな観光をすればいいんだろうか。逆にその地域の人々が日本にやってきていただくためには、どういう魅力を発揮して

 

 

 

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