いくべきなのかということを、本当に時間がなくて申し訳ないんですけれども、神崎さんから順番に、3分ないし4分ぐらいでお話しいただきたいと思います。
神 崎: 最初に話すのが得なんですね。3分が5分になるかもわかりません。
私が最近アジアで感心したのは、先ほど高田さんがいいと言われたマレーシアであります。マレーシアのボルネオのサラワク州にサラワク・カルチャービレッジというのがあります。これはジャングルの観光開発ではなくて、ジャングルの工業開発、つまり木材を切り出す、石油を堀出すとか、そういうことで、イバン族の人たちの非常に昔から続いた生活の基盤が犯される。それを保存して伝えようということで、つまり博物館ではありませんけれども、博物館相当施設なんです。野外展示、動態展示という形です。つまりそこで人たちが働く。働くこと自体が展示物である、というようなことでありまして、晴れていれば野を耕す、雨が降っていれば家の中で織物をする、というようなところへ我々は誘い込まれると、タイムトリップしまして、数十年前のサラワクの生活が見学できるんじゃなくて体感できる。そこでご飯を食べたり、お酒を飲むこともできる。そのお酒はかつてイバンの人たちがつくっていた焼酎である、というようなところであります。これは非常によくシステムとしてはできているんです。1994年の開村だったと思います。今から3年ほど前です。
それからそれに類似する、もっと源流になる施設がありまして、例えば海南島のリー族を中心に動態保存するという例です。海南島至るところに民俗村というのがあります。
それから台湾は我々が高砂族という、大変失礼な十把一からげの名称を使ったんでありますが、言語体系だけでも9つに分かれる山地の種族がいます。その人たちの生活がどんどん近代化するので、台湾を上げて応援してそれを伝えようというのが台中近くの山ひとつをすべて使った九族文化村というのがございます。これは1988年の開村です。
これの原型になるのが、実は今日崔先生がお見えになっておりますが、韓国の水原の民俗村でありまして、これは1974年の開村ですかね。アジアの中では最も古い形の野外博物館相当施設の動態展示です。
我々の生活文化というのは、生活の癖というのは、博物館の建物の中のガラスケースヘ入れて伝えるのが正しいかどうか。少なくともそれは伝える人たちもおもしろくない。見る入も窮屈である。そうなれば晴耕雨読型に野外・室内縦横に使って、できるだけ生なりの、味のままのもとに近い形の、といってもそれは当然演出があります。ありますけれども、伝える入も見る人も、つまり双方が楽しむという益を演出できないものか。そういう形ができないものかということで、実は私の郷里は岡山県の美星町という中国山地の南の端なんですが、そこで先ほど高田さんが言われた何かをしようとしても何もないと言っておりましたので、私が何もなくてもおてんとうさまと歴史はあるということで、時代考証して、私の仲間の歴史学者を連れて行って、分かるところでは中世まではさかのぼれるというので、“中世夢が原”という歴史テーマパーク、言い方を変えれば野外博物館相当施設をつくりました。これの教科書にしたのは韓国の民俗村であります。原点を忘れてはいけないというので、来週からまた私の郷里の若い人たちは民俗村へ研修に出かけます。
ということで、文化を生き生きと伝えるということでは、日本よりもアジアの近隣諸国の方がはるかに先進地であるということで、私はその面では大いに学ばなければいけないと思います。
端的に申します。酒というのは我々の生活に非常に深く関与したものでありまして、この酒がただそこらの酒屋で売っている酒をそこで造って飲ましたのではだめでありますが、さかのぼれるだけさかのぼって、それが歴史的に事実があって、その地域のコミュニケーションを非常に高めた酒であれば、私は博物館、あるいは博物館相当施設をなぜつくって、そこで飲んでもらっちゃいけないんだろう。我々の頭を切り換えるというのはまずそういうことがひとつのテーマではないか。先ほど言いました韓国の民俗村、台湾の九族文化村、マレーシアのサラワク村、すべて酒を造って飲ませてくれます。
我が国は、言い換えれば博物館大国であります。文部省の登録博物館は618館であります。これは登録博物館というのは、規定の収蔵庫を持ち、学芸員を置くということであります。それから外れた博物館相当施設、野外テーマパークなんかも含めてでありますが、何と3,200足らずあります。合わせて3,800。これだけ博物館がある。それは中にはもう建物の中のガラスケースに置かざるを得ない高級美術品を中心に集めた美術館もありますが、その中のかなりが我々の生活文化を伝えるものであります。これがつくられたはいいけど活用されてない。つまり我々日本入のそれに対する観念はあくまでも文化財保護なんです。保護じゃなくて伝承・活用ということを考えればいい。それが私はより良いゲストとの関係をつくるホスピタリティーの伝承の場にはならないかと期待しているのであります。
ごめんなさい、3分ほどよけいになりました。
高 田: いよいよ高度成長以前、1950年に制定された文化財保護法を考え直さないといけないという問題もここには含まれているかと思います。
本当に時間が押したので、もっと短く井野瀬さん。
井野瀬: はい、わかりました。じゃあ感想めいたことも含めて一言。
私はイギリスをやっておりますけれども、最近とみに感じておりますのは、欧米中心でつくられてきた様々な発展・進歩のモデルが崩れてきているということです。この発展・進歩ということに最大限の価値を認めましてやってきた欧米式のやり方を我々が変えるためにはどこを見ればいいのか。こ