ワンポイント
消防職員のための法令用語解説
届出及び行政手続法補則
1 届出
行政手続法は、第5章で届出について、同法37条に規定する。
同条は、「届出が届出書の記載事項に不備がないこと、届出書に必要な書類が添付されていることその他の法令に定められた届出の形式上の要件に適合している場合は、当該届出が法令により当該届出の提出先とされている機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたものとする」と想定する。
これは、届出義務のある者が、届出をすることによって義務をはたしたことになるので、届出を受けた行政機関は、その旨を理解しておく必要がある。
消防法8条2項の規定に基づく、防火管理者の選任届出がなされた場合に、その届出が消防法令上、違法と判断される場合は、消防機関は、届出受理拒否処分をしなければならないと解する。
2 補則
行政手続法は、補則として、38条に、次のように規定する。
「地方公共団体は、第3条第2項において第2章から前章までの規定を適用しないこととされた処分、行政指導及び届出の手続について、この法律の趣旨にのっとり、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」
地方公共団体の機関が条例等に基づいて行う処分、条例等に基づいて行われる届出手続や、地方公共団体の機関が行う行政指導については、行政手続法の処分に関する手続、行政指導、届出の規定は、適用されないことになっている(行政手続法3条2項)。
これは、地方自治を尊重して定められているものである。
しかし、地方公共団体が、条例等に基づく処分や、行政指導に関して必要な措置を講ずることは、行政の透明性、公正の確保のために必要である。
そのことから、行政手続法38条の規定が設けられているものである。
この規定をうけて、各地で、条例や要綱が定められているが、行政手続条例を制定することが望ましい。
行政手続法施行後、早期に行政手続条例を制定する必要性から、各地で制定された行政手続条例は、ほとんど、行政手続法と同一内容の条項を定めたものが多い。
しかし、法律に違反しない範囲内で、各地で行政手続に関して、条例で特有の定めをすることも許される。
そこで、行政手続法で定める手続よりも、厳格な手続を、条例で基づく処分等について定めることは可能かという問題がある。
行政手続法は、地方自治の尊重という観点から適用除外を定めたものである。
行政手続法は、条例等に基づく処分について、行政手続法よりも厳格な手続を定めることを禁止しているとは解されないので、厳格な手続を定めることは許されると解する。
(行政手続法の解説は本号で終了)
(全消会顧問弁護士 木下 健治)