3-1 大規模避難空地の評価
昭和40年から開始される「東京都大震火災時避難に関する研究」は、大正12年の関東大震災の様な惨事を防ぐ為に都民の安全避難を計画するとし、避難場所の選定条件の整理と都内42の空地に対し有効避難面積と区民の避難地への割り振りを提案している。東京都は昭和46年の東京都震災予防条例の制定に伴い東京都震災予防計画を策定し、現在は148箇所が指定されている。避難場所指定の考え方として、周辺市街地大火による輻射熱(2050kcal/?uh)から安全な有効面積を確保するとし、概ね10ha以上の空地を対象としている。これは、木造無限直線市街地からの必要前面距離は300mとすることに由来している。また、具体的な避難地の有効面積の算定に際しては、有限直線市街地で木造と防火造の比率により修正をおこなっている。しかし、その結果は極めて大規模な空地を必要とする結果となっている。
3-2 都市防火区画の評価
昭和52年から始まった「防火総プロ」(建設省総合技術開発プロジェクト「都市防火対策手法」)は、市街地を幹線道路で囲まれる約1km四方程度の規模の地区を火災から独立した区画(「都市防火区画」)として整備する為の技術を集体系したものである。これまでの出火・延焼・延焼遮断の考え方を整理するとともに、大規模な実験をも行い、約1km四方規模の地域で具体的に適応可能な技術として提示された。これ以後、出火・延焼・延焼遮断に関わる技術のバイブルとして利用されるとともに、東京都の防災生活圏構想や各地の防災区画、沿道の不燃化の事業が展開されることになった。特に重要なものが、区画間幹線道路の延焼遮断効果の判定に関わるものである。
その結果、道路幅員数10メートルの範囲で延焼遮断効果が判定される結果が得られ、具体的な道路改修と沿道の不燃化が現実的なものとなったのである。
しかし、今回の阪神・淡路大震災では、関東大震災以後、初めての市街地大火を伴う被害が発生したが、その規模は、この総プロが想定していたものと比べると極めて小さい規模のものであった。早朝で無風の状況であったとはいえ、小公園は比較的狭い道路で延焼が遮断されたり、小規模な樹木による延焼遮断の実例は、この総プロの適応対象外であったといえる。また、その後の復興も小規模街区単位で行われ、その街区単位での防災評価が必要になるにあたって、より小規模単位での出火・延焼・延焼遮断の評価技術の開発が火急の課題となるにいたっている。(図2)
3-3 市街地の防災性能の評価
住宅地の出火と延焼の評価とは別に、市街地整備という観点から、不燃化の目標水準として「不燃領域率」という用語が使われはじめてきた。本来、都市の防火区画を構成する広幅員道路の延焼遮断効果を判定する際の市街地火災の形態を評価するに用いられていたものが、 一定の不燃領域率の市街地では火災が出火してもいずれ鎮火してしまう基準として考えられるようになったのである。その結果、地域の整備目標として不燃領域率が用いられるようになってきたのである。計