消防最前線
要特殊部隊の応援要請
イ 大隊長は指揮隊員に、工事現場の図面及び工事概要等の情報を関係者から収集させ、進入経路及び消火方法等を分析し、内部進入を強力に統制した。また、直近に部署したポンプ隊3隊を指定し、防ぎょ線の延長、内部の延焼状況の確認及び消火活動を下命した。
ウ 工事現場は交差点付近で、交通量が激しく、活動障害となっていたため、はしご車等を活用して消防警戒区域を設定し、活動スペースを確保した。
工 大隊長は、指定したポンプ隊と特別救助隊を交互に進入させ、安全かつ効率的な消火活動に当たらせた。
オ 情報指揮隊は、工事現場で作業していた52人の確認及び事故原因に係わる情報の収集等を実施した。
力 大隊長は、排煙隊を要請し、開口部からの排煙活動を実施させ、内部の活動障害を排除した。

キ 大隊長は、長時間の濃煙熱気内活動に備え、資材搬送隊・補給隊を要請し、空気ボンベの補充、投光器の集積及び水分補給等の後方支援体制の充実を図った。
6 活動上の問題点及び教訓
(1) 地下火災における消防活動の制約
地下火災では、進入口等が制限され、濃煙熱気が外部に放出されにくく、更に自然光等による照明の確保が困難である。
このような環境下では、消防隊員が、高温多湿・視界不良の中、長時間の消防活動を強いられ、二次災害の発生危険が極めて高い。このことから、早期に照明隊・排煙隊・資材輸送隊・補給隊等の特殊車隊を要請し、資器材の補充、隊員への水分補給及び洗眼等を目的とした後方支援体制の確保を図る必要がある。

(2) 情報収集及び情報管理
外部と遮断された地下空間で発生した災害は、限られた関係者が重要な情報を持っている。指揮本部長等は、情報指揮隊等を指定し、明確な任務分担を行い、早期に関係者と接触を図り、多岐にわたる詳細な情報の収集と分析及び管理を行うことが必要である。
各級指揮者は、工事現場の各種情報及び状況を的確に把握し、全隊員に周知徹底するとともに、隊員等の進入統制を行い、最小の進入人員で、安全かつ効率的な救助及び消火活動を行う必要がある。
本災害では、所轄消防署と工事関係者との間で事前に協議して、警防対策を樹立していたことから、早期に災害内容等の情報が容易に把握でき、消防活動が円滑に行われた。このことは事前警防対策の有効性を実証したものであり、改めてその重要性を再認識した。
おわりに
東京地区の開発に伴う交通網、電気通信網及び下水道等の整備により、本火災事例のように地下空間での災害は、近年多発の傾向にある。
社会の発展に伴い、困難性の高い災害形態が生み出されるところであるが、我々消防は、常に先取的に対応し、新たな戦術の策定・装備の充実・活動隊員の育成を行い、住民の安全を確保することが使命であり、東京消防庁一丸となって取り組んでいる現状である。
(丸田 茂男)
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