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防災とボランティア

財団法人都市防災研究所 主任研究員 重川希志依

 

はじめに

阪神・淡路大震災では、被災地の行政機能が大きく低下し、それを補う力として多数のボランティアが活躍しました。発災直後は、被災地の外から駆けつけたボランティアが中心となりましたが、日が経つにつれ、被災者自らが助け合う自助活動が中心となった地域もあります。また最初から「自分たちのことは自分たちでやるべきだ」と、外部からのボランティアを一切受け入れなかった町もありました。

本震災以降、防災ボランティアに対する期待は高まり、地域防災計画にもボランテイアの一項が設けられるようになりました。災害時に、ボランティアの力が最大限発揮されるよう、反省すべき点は何だったのか、ボランティアに関する課題を整理しておくことは重要です。

 

1 4つのタイプのボランティア

阪神・淡路大震災でボランティア活動を体験した人、あるいは今現在も継続している人の話を聞く機会がありましたが、その折りに、本震災のボランティアには大きく分けて四つのタイプがあることに気づきました。

第1のタイプ:遠隔地駆付け型ボランティア

テレビに映し出される阪神・淡路大震災の被害状況を見て、「被災地に行って何かしなければいけない」という想いに駆られ、全国から集まったボランティアです。北は北海道から南は九州・沖縄まで、遠距離をものともせず、最も早く被災地に入って来たボランティアで、震災翌日の朝にはリュックを背負い駆付けてきました。

自営業・学生・アルバイターなど、自由な時間を持つことのできる人たちで、年齢も比較的若い層が中心でした。

このタイプのボランティアのもう1つの特徴は、被災地での活動期間の短い人が多かったことです。「3日目にはプロになれる」と言われる世界で、目まぐるしく人が交代し、引継ぎだけで半日過ぎるという例も多々あったようです。

第2のタイプ:被災地周辺地域からの応援型ボランティア

京都・奈良・滋賀など、被災地に比較的近い地域から駆付けたボランティアです。自分たちも震災で震度4〜5の揺れを体験しており、まず家族や友人、知人らとお互いの安否を確かめあったり、家の中の被害を修理したり片づけたりで、震災から1週間程度は自分自身の対策に目が向いています。

ところが、自分の対策が一段落すると、自分たちよりもずっと悲惨な被害を受け、いまだに満足な食事もできない人たちが、すぐ近くにいたことにハッと気づきます。そこから先は第1のタイプと同じ動機、すなわち「何かせずには居られない」想いでボランティアにやってきました。比較的被災地に近いため、第1のタイプ(遠隔地駆付け型)よりは長期間にわたってボランティアを続けた人が多いようです。

第3のタイプ:被災者型ボランティア

被災者自身がボランティア活動を行っている例です。震災から3年近くを経た今現在、被災地のボランティア活動を継続している人たちの多くは、自分自身が被災者であり、被災地に住んでいる人たちです。

自分たちも震災によって大きな被害を受けているので、発災直後はボランティア活動どころではありません。しかし時間がたち、自分自身の生活が元に戻るにつれて、再建の目途もなく仮設住宅で暮らす同じ市民のために「何かしなくては」という気持ちが起こってきます。

ボランティア活動を本格的に開始するまで

 

 

 

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