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ライフアップで健康な職場生活を

東京都総務局勤労部 健康管理参事医 梅垣 和彦

 

職業生活をとおして、健康で充実した人生を送りたいと、多くの人が願っている。しかし、職場や家庭など社会全般には困難なことも多く、ともすると健康を損ねたり、疲れて虚しい思いで、毎日を過ごすということも無いとは言えない。

この問題解決のための対策を立てるのはなかなか難しいことだが、健康という視点から問題を考えてみたいと思う。まず健康についての考えを再検討したうえで、職場生活を中心にした人生の全経過を健康に過ごすための方法についての要点を述べ、特に最近関心が高まっているストレス対策について実際に利用できる事柄に焦点をあててみたいと思う。

 

1 健康な生活とQ・O・L(生活の質)

近年マスコミや人々の話題には健康に関することが多いようだが、このことは、それだけ自分の健康に不安があることを反映していると考えることができる。「病気になったら、さらに悪化したら、健康を失ったらどうしよう。」という不安が社会全体に漂っているということから、最近の社会は健康不安状況とも呼べそうである。

このような社会状況のなかで、健康不安を乗り切り、健康で充実した人生を送るためには、病気の予防もさることながら、健康生活の質を高めてゆくことが重要になってくる。

(1) 健康観とWHO

健康についての考えは人によって異なる。現在健康で毎日過ごしている人達にたずねたとすれば、おそらく「健康とは病気ではないことです。」という答えが返ってくると思う。しかし、高血圧症や心臓疾患、糖尿病といった、いわゆる生活習慣病を持ちながらも仕事や社会生活を送っている人達は大勢いる。このような人達にとっての健康は、また別の意味合いを持っていることと考える。例えば、病気を悪くしないように気を付けながら、何とか今のように仕事や社会生活ができれば、自分にとってはこれが健康状態と考えたい。あるいは、おおざっぱに「医者にかかるほどのことでなければ、まあ健康です。」などである。

つまり、私たちの生活のレベルで健康を考えたとき、「健康と病気の境をキッパリとは引きにくい。」ということである。それでは、病気の側からではなく、健康に重点をおいて考えた場合、どの様な健康観が充実した人生を送るために役に立つであろうか。

考えを進めるために参考として、WHO(世界保健機関)の健康定義を述べてみたい。そこでは、健康とは、病気では無いということだけではなく、身体的にも、精神的にも、社会的にも、良好な状態をいう。」としている。さらに近年のものでは「健康は、社会・経済・個人の発展にかけがえのない資源であり、生活の質の重要素である。」となっている。

この2つの健康定義を比べてみると、社会の変化に応じて健康観も形式的側面から内容や質の重視に移ってきていると言えるであろう。

(2) 大切な健康習慣

病気の予防には3つのレベルがある。「?@病気にかからないようにしてゆく。?A病気を悪くしないようにする。?B治った病気を再発させないようにする。」などである。しかし、それ以上に今もっている健康をどの様にして生きてゆくかという、健康のほうにウエイトを

 

 

 

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