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◇二ツ井藤里地区消防本部◇

(秋田)

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二ツ井藤里地区消防本部は、二ツ井町・藤里町から構成され、秋田県の北西部に位置している。母なる原生の森「奥羽山脈」に水源を発する県下第二の長流「米代川」が、管内の中央をゆっくり蛇行するように流れ、南北を山林に囲まれた水と緑の豊かな地域である。

藤里町には、屋久島とともに日本ではじめてユネスコ世界自然遺産に登録された″白神山地″がある。縄文時代の始まりとともに誕生したと考えられる原生的なブナの天然林が、世界最大規模で分布し、緑豊かな温泉と観光の町である。また、二ツ井町には明治14年ここを訪れた明治天皇が、その美しさに感動し『溪后阪』と命名した県立自然公園「きみまち阪」がある。その際、゛夏の長旅を気づかう皇后陛下のお手紙が、ここで天皇陛下をお待ちしていた"とのエピソードにちなみ、「きみまち恋文全国コンテスト」を開催。入選作品集『日本一心のこもった恋文』は、ベストセラーにもなったほどのロマンの町である。

消防本部発足は昭和46年5月1日で、3部制勤務を実施している。現在の体制は1本部・1署・1分署、51人の職員と、2団本部・19分団、398人の団員で、総面積463.38km、人口18,100人の安全を守っている。

★安全な町をめざして!

昭和47年に、秋田県北部を記録的な豪雨が襲い、町の大部分が浸水・水没した二ツ井町は、これを教訓に、「洪水避難地図」を作成し、町内の全世帯に配付した。地図には、昭和47年の浸水実績範囲・浸水予測範囲・避難場所等が図示され、防災関係機関等の連絡先・持ち出し品・避難時の心得等が明示されている。こうした住民への防災情報の提供・意識の喚起及び地道な消防行政等の推進により、幾度となく大規模な自然災害に見舞われたにもかかわらず、1人の死傷者も出ていない。

★わが町はわが手で!

当管内は南北に細長く、山間部が多いことから、消防隊が現場到着するまで相当の時間を要する。このことから、付近住民による初期消火及び応急手当ての奏功を実現するために゛1世帯1名″の「初期消火訓練体験者並びに普通救命講習修了者」を目標に、積極的な活動を続けている。

初期消火の訓練指導は、当務中の署員が指定された区域に夜間車両で出向し、10年間で1巡できるよう計画、今年で3巡目となった。その功が生じたのか、住民の火気取扱いに対する意識も変わり、過去10年間の平均火災件数は6.6件で、焼損床面積も比較的少ない。また、昨年度の普通救命講習修了者は54人であったのに対し、今年度は349人にも達し、県下でも有数の講習修了者率である。

★救急業務の高度化をめざして!

今年度から東京都研修所の救急救命士養成過程に1人入校する。来年度以降も順次養成し、有資格者4人が誕生したところで、高規格救急車を導入。既成の救急車と合わせて2台で運用し、増加・高度化する救急業務に対応するため、着々と準備を進めている。

★能カアップをめざして!

少数精鋭で効果的な消防行政を推進するために、職員の能力アップを図っている。平成8年度の教育課程別入校状況は、秋田県消防学校に14人・消防大学校(予防科)に1人・国家資格取得講習に4人と延べ19人が研修及び受験している。

最後に佐藤消防長は「好きな言葉は゛精力全用自他共栄"です。職員1人ひとりがベストを尽くし、和をもって地域に根ざした消防行政を遂行し、経験を・歴史を次代に語り継ぎ、安心して暮らせる街を築いていきたい。」と力強く語られた。 (野崎 俊幸)

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