日本財団 図書館


ワンポイント

消防職員のための法令用語解説

 

行政指導(1)

 

1 行政手続法で定める行政指導

 

行政手続法は、行政指導について、次のとおり定義している。

「行政指導=行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において、一定の行政目的を実現するために特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。」(行政手続法2条6号)。

行政指導は、法的拘束力がなく、相手方の任意の協力のみによって、その目的が実現されることを示している。

 

2 行政指導の一般原則

 

行政指導の一般原則として、行政手続法は次のように定めている。

「行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。」(行政手続法32条1項)

「行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。」(行政手続法32条2項)。

この点に関する判例として、「宅地開発指導要綱」に基づいて、教育施設負担金の納付を求めた行為について、法が認めていないのに、しかも、要綱に従わない(行政指導に従わない)ときは、給水契約の締結の拒否等の制裁措置を背景としてなされる行政指導である場合には、本来任意に寄付金の納付を求むべき行政指導の限度を超え、違法であるとした判例がある(最高裁、平成5年2月18日判決)。

宅地開発要綱も、1つの行政指導である。

要綱又は行政指導に従わない者を公表できるかについては、いろいろな考え方があるが、情報(事実)の提供にすぎないので、行政指導の実効性を確保するために、極端な場合には認められると解する。しかし、公表は、事実上制裁機能となるので、安易に行われるべきではないと考える。

 

3 申請と関連する行政指導

申請と関連する行政指導については、行政手続法は、次のように想定している。

「申請の取下げ又は内容の変更を求める行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず、当該行政指導を継続すること等により当該請者の権利の行政を妨げるようなことをしてはならない(行政手続法33条)。」

これは、マンション建築に反対する住民と建築主との調整を図るために、建築確認を留保することが許されるのかといった形で問題となる。

判例は、建築主に協力を求める行政指導は、建築主が、これに応じていると認められる場合には、社会通念上、合理的な期間、確認処分を留保することは違法とまでいえないが、建替えが確認処分留保のままでの行政指導に協力できないとの意思を真摯かつ明確に表明し、確認申請の応答を求めているときは、他に特段の事務のない限り、確認留保はできないとする判例がある(最高裁、昭和60年7月16日判決)。危険物施設の許可に関する行政指導について、参考となる判決である。

全消会顧問弁護士 木下 健治

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION