号)として消防法上の責任を問われ、20万円以下の罰金又は拘留に処せられます。「虚偽」とは、自分の認識したことと違うことを言うことです。すなわち、火災発生の事実がないのに、あったようにうそをつくことです。したがって、たとえば、たき火の煙を火災と錯覚(勘違い)して通報する場合のように、自分の認識したことをそのまま通報するのは、虚偽の通報にはあたりません。
なお、この虚偽通報は、同時に虚偽の災害事実を公務員に申告したという軽犯罪法違反(第1条第6号)にも該当しますが、同罪は、消防法上の虚偽通報罪に吸収されることになります。また、みだりに火災報知機を使用して虚偽の通報を行ったときは、火災報知機濫用罪(消防法第18条・第44条第9号)と虚偽通報罪との観念的競合(一個の行為で数個の罪名に触れる場合、刑法第54条第1項)になると解されます。しかし、刑の加重はありません。
(6) 出火建物の関係者等の消火・延焼防止等の義務(消防法第25条第1項)
消防法は、「火災が発生したときは、当該消防対象物の関係者その他命令で定める者は、消防隊が火災の現場に到着するまで消火若しくは延焼の防止又は人命の救助を行わなければならない(第15条第1項ごと定め、出火建物の関係者等に対し、応急消火義務を課しています。
「命令で定める者」とは、次に揚げる者ですが、傷病、障害その他の事由により、消火、延焼防止又は人命の救助を行うことができない者は除かれます(消防法規則第46条)
?@ 火災を発生させた者
?A 火災の発生に直接関係のある者
?B 火災が発生した消防対象物の居住者又は勤務者
「火災を発生させた者には、火災の原因が故意であると過失であるとを問いません。また、「火災が発生した消防対象物の勤務者」とは、事業主との雇用契約により当該建物内の事業所において一定の職務に従事している者を指し、たまたま何らかの用事で当該事業所に居合わせた者は含まれないとされています。
応急消火義務は、火災が発生してから消防隊が火災現場に到着するまでの間において限定的に生ずるものです。したがって、消防隊が現場に到着したのちは、消防吏員等から引き続いて消防作業に従事するよう要求がなされない限り免除されます。
応急消火義務は、内容的に道徳的義務の性質をもっています。したがって、その義務違反に対しては直接罰則が用意されていませんが、応急消火義務者の行う消火・延焼防止等の行為を妨害した者は、消防法上の責任として罰則の適用を受け、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられ、情状により懲役刑と罰金刑が併科されることがあります(消防法第40条第1項第3号第2項)。
なお、応急消火義務者が、消火や延焼防止等に従事する過程において死傷、疾病等の結果が生じても市町村からの損害補償はありません。これは、応急消火義務者は出火建物とかかわりが深く、消火や延焼防止等の消防作業に従事するのは、いわば当然のことであるという理由に基づくものなのです。
(7) 火災現場付近にある者の消火・延焼防止等の協力義務(消防法第25条第2項)
消防法は、「火災が発生したときは、火災の現場付近にある者は、消防隊が火災の現場に到着するまで応急消火義務者の行う消火若しくは延焼の防止又は人命の救助に協力しなければならない(第25条第2項)」と定め、火災の現場付近にある者に対し、応急消火協力義務を課しています。
「火災の現場付近にある者」とは、火災の現場付近に居住していると否とにかかわらず、火災発生の際に現場付近にいる者で、応急消火義務者以外の者のことです。たとえば、火災の現場付近を通行している人などがこれに該当します。
応急消火協力義務の履行として「協力」があったといえるためには、その行為が協力の意思をもって行われることが必要です。したがって、表面的には協力とみられるような行為であっても、たとえば、他人の財産を窃取(他人の財産などを盗み取ること)する目的でなされた行為(火事場泥棒が財産を火災の現場から持ち出し、結果的に延焼防止に役立ったような場合等)は、協力とはいえないの