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(消防法第22条第4項)

火災に関する警報(火災警報)は、市町村長が都道府県知事から火災予防上危険な気象状況にあるとの通報を受けたとき又は自らの判断で気象の状況が火災予防上危険であると認めるときに、市町村長の権限で発することができるのですが(消防法第22条第3項)、火災警報が発令されたときは、警報が解除されるまでの間、その市町村の区域内にある者は、市町村条例で定める火の使用の制限に従わなければならないことになっています。

湿度が低く(空気が乾燥し)、風が強いという気象状況にあるときは、火災が発生しやすく、また一旦火災が発生すると延焼・拡大する可能性が高いことから、火の使用を厳しく制限し、火災の発生を未然に防止しようとする趣旨なのです。

火の使用の制限は、具体的には、それぞれの市町村の火災予防条例で定められるのですが、その内容は、おおむね次のようになっています。

?@ 山林、原野等において火入れ(一定区域内の草木などを焼却する行為)をしないこと。

?A 火(俗にいう花火)を消費しない(揚げない)こと。

?B 屋外において火遊び又はたき火をしないこと。

?C 屋外においては、引火性又は爆発性の物品その他の可燃物の付近で喫煙をしない。

?D 残火(たばこの吸殻を含む)、取灰または火粉を始末すること。

?E 屋内において裸火を使用するときは、窓、出入口等を閉じて行うこと。

この火の使用の制限に従わない者は、20万円以下の罰金又は拘留に処せられます(消防法第44条第13号)

 

(5) 火災を発見した者の通報義務(消防法第24条第1項)

消防法は、「火災を発見した者は、遅滞なくこれを消防署又は市町村長の指定した場所に通報しなければならない(第24条第1項)」と定めて、火災を発見した者に通報義務を課し、さらに、「すべての人は、この通報が最も迅速に到達するように協力しなければならない(同条第2項)」と定め、通報の迅速な到達について協力義務を課しています。

この趣旨は、火災が発生した場合、その被害を最小限度にくいとめるためには、消防機関が一刻も早く火災の発生を覚知し、初期の段階で消火することが必要とされるからなのです。

「火災を発見した者」とは、消防機関が火災発生の事実を知って、消防車が出動する前に火災を目撃した者のことであり、必ずしも火災の最初の目撃者であることを必要としません。したがって、同一の火災について複数の発見者、つまり複数の通報義務者が存在することもあり得ます。すなわち、火災の火元の者のほか、近隣の者、通行人その他火災を発見した者であれば誰でも通報義務を負うことになるのです。「市町村長の指定した場所」とは、市町村長が公示その他の方法により指定した消防署の出張所、消防団本部、消防団の詰所、警察署、警察官派出所及び同駐在所その他の場所をいいます。

通報については、その方法のいかんを問いませんが、一般加入電話による通報(局番なしの119番)が最も一般的で、このほか、いわゆる駆け込み通報、火災報知設備による通報などがあります。「通報の協力」とは、たとえば、電話の加入者が、火災の通報を行うとする者に対して電話の使用につき便宜を与えたり、自ら電話連絡に当たることなどをいいます。

なお、通報によって消防自動車が何台出動しようと、その費用を請求されることなど全くありません。

以上、火災を発見した者の通報義務等について申し上げましたが、これらの義務を怠った場合でも特に処罰されるようなことはありません。それは、これらの義務がいわば道徳的義務としての性格をもち、火災発見者等の自主的な履行や協力を期待したものであり、そうであれば、その性質上、罰則をもってのぞむには適さないからなのです。それに、仮に罰則を設けたとしても、現実の問題として、火災の発見者等で通報等を怠った者を特定することは極めて困難なことと思われます。

しかし、故なく火災発生の虚偽の通報をした者は、虚偽通報罪(消防法第44条第15

 

 

 

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