です。
応急消火協力義務は、出火建物の関係者や火災を発生させた者などの応急消火義務と同様に、いやそれ以上に道徳的義務としての色彩が強く、したがって、その協力義務違反に対しては直接の罰則規定が設けられていません。しかし、応急消火協力義務者の行う消火・延焼防止等の行為を妨害した者は、消防法上の責任として2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられ、情状により懲役刑と罰金刑が併科されることがあります(消防法第40条第1項第3号・第2項)
応急消火協力義務者が、消火や延焼防止等に従事する過程において、死傷、疾病等の結果が生じたときは、市町村から損害の補償があります。(消防法第36条の3)これは、出火建物とかかわりのない第三者に対する市町村の結果責任として行われるものなのです。
(8) 火災時における出火建物等の関係者等の情報提供義務(消防法第25条第3項)
消防法は、「火災現場においては、消防吏員又は消防団員に、当該消防対象物の関係者その他命令で定める者に対して、当該消防対象物の構造、救助を要する者の存否その他消火若しくは延焼の防止又は人命の救助のため必要な事項につき情報の提供を求めることができる(消防法第25条第3項)」と定め、出火建物等の関係者等に対する消防吏員等の情報提供要求権を付与しています。したがって、消防吏員等の要求があった場合には、要求を受けた者は、これに応答すべき義務を負うことになります。
この権限が付与された趣旨は、消防隊が火災現場に到着したときに迅速かつ、的確な消火活動と人命救助を行うことができるためなのです。
消防吏員等が情報の提供を求めることができる相手方は出火建物の関係者のほか、「命令で定める者」となっていますが「命令で定める者」とは、次のとおりです(消防法施行規則第47条)。応急消火義務者にくらべ、その範囲が広くなっていますが、それは、火災時の人命の救助等のためには、延焼のおそれのある建物の情報も必要とされるからなのです。
?@ 火災を発生させた者
?A 火災の発生に直接関係がある者
?B 火災が発生した建物の居住者又は勤務者
情報の内容としては、出火箇所、出火時間、出火建物の出入口や階段の位置、防火戸の有無・間取り等の構造、消火設備の有無、出火建物や延焼のおそれのある建物内の人々の存否などがあげられます。
消防吏員等から情報の提供を求められた者が、正当な理由がなくこれに応じなかった場合には、消防法上の罰則はありませんが、軽犯罪法に該当し、処罰(拘留又は科料)の対象になります(同法第1条第8号)。
(9) 火災現場付近にある者の消防作業従事義務(消防法第29条第5項)
消防法は、「消防吏員又は消防団員は、緊急の必要があるときは、火災の現場付近にある者を消火若しくは延焼の防止又は人命の救助その他の消防作業に従事させることができる(消防法第29条第5項)」と定め、緊急の必要がある場合に、火災の現場付近にある者に対する消防作業従事命令権を消防吏員等に付与しています。この命令を受けた者は、消防作業に従事する義務を負いますが、この義務は、消火、延焼の防止又は人命の救助という公益目的のために特定の私人(国民)に課せられる労役の負担(提供)に該当しますから、むずかしくいいますと学問上の人的応急公用負担に属します。
「その他の消防作業」には、連絡や負傷者の手当て、看護などが含まれます。
消防吏員等の消防作業従事命令を受けた者が正当な理由がなくこれに従わなかった場合には、消防法上の罰則はありませんが、軽犯罪法違反に該当し、処罰(拘留又は科料)の対象となること(同法第1条第8号)は、情報提供義務違反の場合と同様です。
消防作業に従事している者に対し、その行為を妨害した者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられ、情状により懲役刑と罰金刑が併科されます(消防法第40条第1項第3号・第2項)。
消防作業従事命令により消防作業に従事していた者が、その週程において死傷・疾病等の結果が生じた場合、市町村は、損害の補償をしなければならないことになっていますが