日本財団 図書館


安署消防艇での体験航海等、さらに、予防運動中には街頭宣伝や防火パレード等への参画、山火事防止広報板や防火ポスターの作成、年末にはクラブ指導者とともに地区内の夜回りを実施するなど防火意識の高揚を図っている。

○ 婦人消防隊

管内にある婦人消防隊は、山間部に3隊、離島に2隊、新興住宅地に2隊ありそれぞれの環境で活躍している。主な活動内容は、住宅防火診断であり、その際、工夫をこらして作製した『孫の手』や『正座椅子』等をプレゼント、お年寄りに大変喜ばれている。

また、各隊ともそれぞれの地域性を生かし、独居老人宅の訪問時、煙突掃除や海水浴場の清掃作業、団地周辺の枯れ草の清掃作業や空き缶拾い等を行い、『私達の町は、私達で守る』をスローガンに、女性ならではのきめ細かな活動を行っている。

2 住宅防火診断

当管内には、約65,000世帯の住宅があって、平成3年から住宅防火診断に取り組んでいる。婦人消防隊、自治会、民生委員等自主防災組織の協力を得て、特に高齢者、身障者世帯の住宅を診断し、火災の低減に努めている。

また、防火診断をより高度化するため、これら組織の方々に県消防クラブ連合会主催の『住宅防火リーダー研修会』に積極的に参加していただいている。

3 住民と一体となった防火広報

地域に根ざした防火広報を目指して春の火災予防運動時に『地域のみなさんと消防のつどい』を実施している。

午前11時から消防音楽隊を先頭に、幼少年消防クラブ・婦人消防隊、危険物安全協会員等約150人が岩国駅前繁華街で防火広報パレードを実施し、第一部が始まる。

市役所前広場で行われる『ふれあい広場』では、防火餅つき大会をはじめ綿菓子、ヨーヨー、ぜんざい等のコーナーを設け、職員の作製したぬいぐるみが歩き回り子供に人気を博している。また、はしご車、ミニ消防車、ミニ救急車等の体験コーナーに加え、煙体験や応急処置等の指導を行い、参加者は各種の防火防災知識を学んでいる。

その後、高層ビル火災や地震等の大規模災害を想定した消防訓練を実施、隊員の日頃の訓練技術を披露し、屋外の行事を終了。

次に市民会館に場所を移し第二部が始まる。『式典』『消防音楽隊演奏』『岩国太鼓の演奏』、『幼年消防クラブ員の演技』、『地域のみなさんによる演芸』等、住民とのふれあいの場として、また、防火防災思想普及の場として、住民と一体となって実施している。

4 福祉消防

昨年より職員親睦会が母体となり、休耕畑を借受け、非番日や休みを利用して、サツマイモ・大根・胡瓜・玉ねぎ等を栽培し、社会福祉施設に配布している。こうした試みは、地道ではあるが一つの広報の手段として有効であると考える。

おわりに

予防広報は、災害を低減するための手段であるが、すぐに結果の出ない根気のいる業務である。

広報とは、一般に広く知らせることとある。市町村報、有線放送、防災無線、ポスター、チラシ配布、車両広報等さまざまな手段を活用しているが、どれをとっても一方通行であることは否定し得ない。そのためには、住民の意思をフィードバックさせる機能をもった行政、即ち人に優しく人とともにある予防行政、心のかよった福祉的概念のもとに行政に取り組み施策を展開すること、これが私どもの消防の発想と理念である。

『予防広報こそ災害低減の原点である。』我々の力で住民一人ひとりに防災の必要性を認識してもらい、まずは最小の社会単位である一個の世帯から、そして自治会単位さらに地域全体へと広がる、いいかえるなら自主的防災意識を地域ぐるみで持つ環境づくりこそが災害低減への第一歩であると考える。

(柳生 茂樹)

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION