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ワンポイント

消防職員のための法令用語解説

 

申請に対する処分(2)

 

3 標準処理期間

 

行政庁は、申請に対して処分をするまでの標準処理期間を定めたときは、それを公にしておかなければならない(行政手続法6条)。

この規定は、行政運営の適正化の観点から、申請の迅速な処理の確保を図るために設けられた。

ただし、行政庁は、標準処理期間を定める義務を有するのではなく、標準処理期間を定めるよう努力する義務を負うにすぎない。

それは、処分の性質上、審査に要する期間が変動するものもあって、標準処理期間を設定することが困難な場合もあるからである。

しかし、標準処理期間を定めた以上は、それは公にしておかなければならない。

公にしておく方法としては、窓口における備付けや、申請者の求めに応じて提示する方法等がある。

標準処理期間は、申請が、事務所(窓口)に到達してから、当該申請に対する処分をするまでに通常要しなければならない標準的な期間である。

経由期間があるときは、その期間も示す。

補正に要する期間は、標準処理期間に含めない。

標準処理期間が守られなかったときは、不作為の違法確認の訴え(行政事件訴訟法3条5項)で参考とされるであろう。

 

4 消防行政における標準的処理期間

 

消防行政における標準処理期間としては、いろいろな例が考えられるが、例えば、危険物につき、次のようなものが考えられる。

仮貯蔵・仮取扱の承認申請、製造所等の設置許可申請、製造所等の変更許可申請、完成検査申請、仮使用の承認申請、完成検査前検査申請、予防規程認可申請、定期保安検査申請、臨時保安検査申請、完成検査済証再交付申請、保安検査時期変更承認申請等、これらの各申請に対する標準処理期間が考えられる。

この場合、休日等や書類の補正に要する期間は算入しないで定める。

 

5 申請に対する審査

 

行政庁は、申請がその事務所に到達したときは、遅滞なく審査を開始しなければならない。そこで、行政庁は、申請書の記載事項に不備がないこと、申請書に必要な書類が添付されていること、申請期間内に申請がされたこと等の申請の形式上の要件に合致しない申請については、速やかに、申請者に相当の期間を定めて補正を求めるか、又は申請を拒否しなければならない(行政手続法7条)。

実務的には、補正が可能なものは、申請を拒否するのではなく、補正を求めるのが望ましい。

経由機関があるときは、その経由機関が、行政庁とは独立した機関の事務所(例えば、大臣が行政庁で、経由機関が知事の場合)の場合、行政庁の具体的行為の審査開始義務は申請書類が経由機関に提出されたときからではなく、行政庁の事務所に到達したときから発生する。しかし、このことは、経由機関がいつまでも申請書類を保留しておいてよいということでなく、経由機関も遅滞なく申請書類を行政庁に送付する手続きをとるようにしなければならない。

 

全消会顧問弁護士 木下 健治

 

 

 

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