を行う。これら2つのサブシステムの計算結果から、ガスの供給停止の必要性を総合的に評価し、緊急措置判断を支援するものである。
迅速で確実な供給停止判断
SIGNALは供給停止の判断のために有効な情報ではあるが、これだけではまだ十分とはいえない。
各ブロック内のガスの流量や圧力は、常時測定され、コンピューターで監視している。地震時、中圧導管に大きな被害があれば、圧力や流量の異常として検出するための異常流量監視システムも実用化されている。また、通常時におけるガス漏洩の対応のために、各地域に24時間での体制がとられている。この各事業所と本社防災・供給センターは専用無線回路で結ばれている。これを活用して、各地点で得た周辺の停電や火災の発生などの直接情報を自動的に収集する緊急時情報伝達システム-ECOHも開発され実用化されている。また、契約ヘリコプターや巡回車による広域情報、本社や事業所の屋上などに設置した望遠カメラからの周辺被害情報、さらに東京都防災センターからのヘリ空撮画像情報なども早期の被害把握に有効な情報となる。
こうした、情報を総合的に判断し、地域ごとに、ガスの供給を継続すべきか否かを、遅くとも1時間以内には判断することとなっている。
迅速で確実な復旧のために
ガスの供給を停止した場合、復旧作業は何よりも安全を最優先して進めなければならない。具体的にはまず復旧する単位ごとにバルブで分割し、ブロックを形成する。そして、その中での各戸のガスメータが完全に閉栓していることを確認するために巡回する。
次に、ガス液漏のチェックをし、ガス導管の被害箇所を特定する。被害箇所を修理し、再びガス圧をかけ漏洩確認を行う。その結果、完全にガスリークがないことが確認されれば、ガスを通し各需要家で点火試験を行い、ガスメータを開栓する。場合によってはこの作業は何度か繰り返されることもある。それぞれの工程で専門的な技能が必要であり、多くの労力と時間を要することになる。しかし、できるだけこうした作業を迅速に行い、供給を停止したお客さまのご迷惑を最小限にとどめるため、事前に備えておくことが重要である。
緊急用資材や復旧工事用材料、作業員の飲料水、食糧、医薬品などはそれぞれ複数箇所に分散して一定量を平常時から備蓄している。また、こうした場合は迅速で正確な対応が求められるが、作業員の行動要領もきめ細かく定めている。
復旧作業は、各工程が複雑であり、要員や資器材を有効に活用した復旧計画が作業全体の効率を高めるうえで重要になる。このため、 コンピューターを活用して、復旧を指示するシステムを開発し、大地震に備えている。
おわりに
いま産業界全般に規制緩和の波が押し寄せ、既成の枠組みを越えた領域への進出、いわゆるボーダレス化によって、競争激化の時代を迎えてきている。電力・ガス事業に代表されるエネルギー業界にあってもそれは例外ではなく、既に広範囲にわたり相互に既存のテリトリーへの侵出がはかられてきている。都市ガスはクリーンで経済的なエネルギーとして、民生用だけでなく、いまや産業用としても着実に、その用途を拡大してきている。しかし、一方において、都市ガス自体が可燃物であることから、安全への不安を払拭しきれず、それが需要拡大への足かせになっていることも否めない。都市ガスが21世紀に向けて信頼されるエネルギーとして、大きく生きつづけるためには、真に安心してガスを使用していただける状況をつくり出すことが不可欠である。
こうした認識から、ガスに起因する事故の発生を0にすることを目指したガス安全高度化推進施策を総合的に展開しているところである。最新の技術を駆使した設備やシステムの開発・導入だけでなく、ソフト的な対応をも組み込むことにより、その目的の達成は現実のものとなることを確信している。